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生前の備え

親から子へ家の名義を移す4つの方法|相続・生前贈与・売買・家族信託の税金比較

公開日 2026年8月23日 ・ 更新日 2026年8月23日 ・ 10分で読めます

「親が元気なうちに、実家の名義を子に移しておきたい」──その方法は①相続まで待つ ②生前贈与 ③親子間売買 ④家族信託の4つです。そして意外なことに、税金の合計だけを見れば「①相続まで待つ」が最も安くなるケースが多数派です。

この記事では4つの方法をコストと目的で比較し、「それでも生前に動かすべきなのはどんなときか」を整理します。なお、すでに相続が発生した後の名義変更(相続登記)の手順は「相続登記を自分でやる方法」をご覧ください。この記事は親が存命の今、何を選ぶかの話です。

4つの方法の全体マップと比較表

← 今すぐ移したい 将来でよい → ↑ コスト高 ↓ コスト低 ② 生前贈与 贈与税+取得税+登録免許税2% ③ 親子間売買 代金の用意+譲渡所得税など ④ 家族信託 贈与税なし・管理を移す方法 ① 相続まで待つ 登録免許税0.4%・取得税なし 税コスト最少になりやすい 確実に今、所有権ごと移る
図1:4つの方法の位置づけ。「いつ・何を移すか」と「コスト」のトレードオフです。
① 相続まで待つ② 生前贈与③ 親子間売買④ 家族信託
所有権が移る時期親の死亡時今すぐ今すぐ形式上の名義は今、実質は死亡時等
主な税金相続税(基礎控除・特例あり)贈与税+不動産取得税親に譲渡所得税の可能性贈与税なし・取得税なし
登録免許税0.4%2%2%0.4%(信託の登記)
不動産取得税なしあり(原則3%・軽減あり)あり(同左)なし
向く目的コスト最少で承継早期の確定・値上がり資産の移転子に資金があり対価を伴う移転が必要な事情認知症対策・管理の承継

なぜ「相続まで待つ」が税金では最少になりやすいのか

理由は3つ重なります。① 移転コストが桁違いに安い──登録免許税は相続0.4%に対し贈与・売買は2%(評価2,000万円の家なら8万円 vs 40万円)。不動産取得税も相続なら非課税です。② 相続税には大きな控除がある──基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)に加え、同居の子などが自宅を継ぐなら小規模宅地等の特例で敷地評価が8割減になり、そもそも相続税がかからない家庭が多数です(5分でできる判定)。③ 贈与税は税率が重い──同じ財産額なら、贈与税は相続税より高くつく設計になっています。

先に確認すべき1つの数字

親の全財産の概算が基礎控除の範囲内なら、「相続まで待つ」の税コストはほぼ登録免許税0.4%だけです。この場合、生前に高いコストを払って移す理由は、税金以外の目的(次章以降)があるかどうかにかかっています。まず財産目録で全体像を掴んでください。

方法②:生前贈与|暦年課税と相続時精算課税

それでも贈与で「今」移すなら、課税方式を選びます。

暦年課税──年110万円の基礎控除を超えた分に累進課税。家1軒をまとめて動かすと税額が大きく、持分を毎年少しずつ移す方法は登記費用がかさむうえ、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に足し戻されるルール(7年ルールの解説)で効果が消えることもあります。
相続時精算課税──累計2,500万円(+年110万円の基礎控除)まで贈与時の税をゼロにし、相続時に贈与時の価額で精算する制度。値上がりが見込める不動産や、今すぐ確定的に渡したい事情がある場合に有効です(制度の詳細と注意点)。

どちらでも、贈与契約書の作成と登記までがワンセットです(贈与契約書の無料作成/ひな形の解説はこちら)。また、贈与は他の兄弟から見れば特別受益となり、将来の遺産分割で持ち戻しの主張を受け得ます。実行前に家族で共有し、遺留分にも配慮してください。

方法③:親子間売買|「安く売る」は危険

子が代金を払って買い取る方法です。使われるのは、親の老後資金を捻出したい、共有関係を清算したい、といった対価が必要な事情がある場合に限られます。注意点は3つ──

① 時価からかけ離れた安値は「みなし贈与」──時価より著しく低い価額での売買は、差額に贈与税が課され得ます。査定書などで価格の根拠を残すことが必須です。
② 親に譲渡所得税──売却益が出れば親に課税されます。マイホームの3,000万円控除は、親子間(生計を一にする親族等への売却)では使えません
③ 住宅ローンが使いにくい──親族間売買には多くの金融機関が慎重で、融資のハードルが高いのが実情です。

要するに、親子間売買は「節税策」ではなく必要があって行う取引です。実行するなら、税理士・司法書士を入れて時価・契約・登記を固めてください。

方法④:家族信託|名義は動くが贈与税はかからない

「名義を移したい」動機の多くは、実は「親が認知症になったら、実家を売ることも貸すこともできなくなる」不安です。この目的なら、所有権を今すぐ贈与しなくても、家族信託で解決できます。

家族信託のしくみ(家の管理承継に使う場合)

親(委託者)が子(受託者)に家を信託すると、登記名義は子に移り、子が売却・賃貸・修繕を親の判断能力に関係なく行えるようになります。一方で利益(住む権利・売却代金)は親(受益者)のものなので、贈与税も不動産取得税もかからず、親の死亡時に子へ承継させる設計(遺言代用)も契約に組み込めます。詳しくは「家族信託のメリット」「費用の相場」をご覧ください。

弱点は、初期費用(専門家報酬・登記費用)と、親の判断能力がしっかりしているうちにしか契約できないこと。認知症対策が目的なら、着手のタイムリミットは4つの方法の中で最も早く来ます(いつから始めるべきか)。

結論の出し方|目的別の選び方

あなたの目的向く方法
コストを最少にして実家を継ぎたい(急ぐ事情なし)① 相続まで待つ+親の遺言書で取得者を確定(遺言の無料作成)。兄弟がいる場合の「土地は誰が」問題は親の土地に家を建てる記事の備えと共通です
親の認知症で実家が凍結するのが怖い④ 家族信託(管理だけ今移す)。任意後見との比較はこちら
値上がり確実な不動産を早く確定的に渡したい/どうしても今、所有権ごと移したい② 生前贈与(相続時精算課税の検討)+贈与契約書+兄弟への共有
親に売却代金を渡す必要がある(老後資金・共有清算)③ 親子間売買(専門家関与のもとで時価取引)

金額が大きい判断のため、②③を実行する前には税理士の試算を一度挟むことを強くおすすめします(専門家費用の相場)。

よくある質問

「相続まで待つと兄弟と揉めそう」なのですが、それでも待つべきですか?

揉める不安への正しい対処は、名義の前倒しよりまず親の遺言書です。「自宅は長男に相続させる」という遺言+遺留分への配慮(代償金・保険)で、待ちながら争いを封じられます。生前贈与は特別受益の主張を招き、かえって火種になることもあります(兄弟トラブルの原因と対処)。

住宅取得等資金の贈与の非課税は使えませんか?

あの特例は「家を買う・建てるための資金」の贈与が対象で、実家という「家そのもの」の贈与には使えません。家の名義移転とは別の制度と整理してください。

名義を子に移しておけば、介護施設の費用や生活保護の資産要件で有利になりますか?

そのような目的での直前の名義移転は、贈与の否認・不当な資産減少と評価されるリスクがあり、おすすめできません。介護費用の備えは、家族信託や不動産活用など正面からの設計で行ってください(施設費用が足りないときの選択肢)。

二世帯住宅を建てる予定です。名義はどうすべきですか?

大原則は「お金を出した割合=名義の割合」です。ずれると贈与税の問題が生じます。土地が親名義のまま子が建てる場合の論点(使用貸借・小規模宅地の特例)は「親の土地に家を建てるときの注意点」にまとめています。

4択の判断は、親の財産の全体像を見てから

実家の評価額と他の財産を財産目録に書き出せば、「基礎控除内か」「どの方法が合うか」が見えてきます。親子で一緒に、無料で作成できます。

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な制度解説であり、個別の事情に応じた法的・税務的助言を行うものではありません。税率・特例・軽減措置は改正されることがあり、適用可否は個別の要件によります。名義の移転は金額が大きく後戻りが難しいため、実行前に税理士・司法書士へご相談ください。(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)