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生前の備え

認知症対策はいつから始める?「まだ早い」が唯一の適齢期——判断能力の坂道と対策の締切

公開日 2026年8月18日 ・ 更新日 2026年8月18日 ・ 7分で読めます

「認知症対策って、何歳から始めるものですか?」——この質問への正確な答えは、「年齢ではなく、判断能力で締切が決まる。だから話し合える今が適齢期」です。

家族信託も、任意後見も、遺言も、銀行の代理人登録も、すべて「本人に判断能力があること」が契約の絶対条件です。そして判断能力は、ある日突然ゼロになるのではなく、坂道のように下っていきます。この記事では、その坂道のどこまで何ができるのか、対策ごとの締切と、急ぐべき手遅れシグナル、MCI(軽度認知障害)と言われた後でもできることを整理します。

なぜ「診断されてから」では遅いのか

  • 契約に必要なのは医学的な診断名の有無ではなく意思能力(内容を理解し判断する力)です。とはいえ実務では、認知症の診断が付くと、公証人・銀行・専門家は契約時の意思確認を厳格化し、進められないケースが急増します
  • 対策なしで判断能力を失うと、預金は凍結(認知症の口座凍結)、不動産は売却不能、株の議決権も凍結(自社株の家族信託)——残る手段は原則やめられない成年後見成年後見をやめたい)だけになります
  • 日本の認知症の人は高齢者の約5人に1人という規模になると推計され、さらにその予備軍であるMCIが同程度存在するとされます。「うちの親は大丈夫」の根拠は、統計的にはかなり弱いのです

判断能力の坂道と「対策ごとの締切」

判断能力の坂道 ― 対策ごとの締切マップを示す図解
図:判断能力の坂道 ― 対策ごとの締切マップ
  • ①元気(自立):すべての対策が選べる唯一の時期。家族信託(家族信託と成年後見の違い)・任意後見(任意後見との併用)・遺言(自筆証書遺言の書き方)・生前贈与・銀行の代理人登録(銀行の認知症対策サービス)——選択肢が最多で、費用も最安で、家族会議も穏やかにできる「ゴールデンタイム」です
  • ②MCI(軽度認知障害)〜ごく軽度:物忘れはあるが日常生活は自立。契約内容を理解し自分の言葉で説明できれば、信託・遺言・任意後見はまだ可能な場合があります。ただし後述の慎重手順が必要で、複雑な設計(収益物件の信託・自社株・自社株の家族信託)から順に難しくなります
  • ③軽度〜中等度の認知症:日によるムラ(まだら)が出る段階。新たな契約は原則困難になり、できるとしてもシンプルな遺言が限界というのが実務の相場観。ここからは「対策」ではなく「後見の検討」(成年後見の申立て方法)のフェーズです
  • ④重度:契約は一切不可。法定後見のみ。——つまり、締切は③に入る前。そして②から③への移行は、家族が思うより速いのです

急ぐべき「手遅れシグナル」——1つでも当てはまれば今月中に

  • ①同じ話・同じ質問を1日に何度も繰り返す ②通帳・印鑑・財布をなくして家族を疑う ③料理の味付け・運転・服薬の管理に明らかな変化 ④郵便物や請求書が放置され始めた ⑤直近の出来事(昨日の夕食)を思い出せない
  • これらは受診と対策検討を並行して始める合図です。かかりつけ医・もの忘れ外来の受診と同じ週に、専門家(司法書士等)への相談予約を——「診断を待ってから対策」は順序が逆。診断が付くほど対策の扉は狭くなります
  • 年齢の目安をあえて言うなら:親が70代なら計画的に今年中、80代なら今月中、手遅れシグナルありなら今週。切り出し方は「相続の話」ではなく「入院したとき困らないように」から(親への切り出し方

MCI・ごく軽度でもできるか——実務の慎重手順

  • 可否は「診断名」ではなく契約時の理解力で判断されます。実務では①主治医に「契約能力に関する診断書」や長谷川式・MMSEの結果を依頼 ②契約は本人の調子の良い時間帯に設定 ③公正証書化し、公証人の面前で本人が内容を自分の言葉で説明できるかの確認を経る ④面談の録音・録画や立会人で経緯を記録——という手順でリスクを下げます
  • それでも後日「あの契約時には意思能力がなかった」と他の親族から争われるリスクはゼロにはなりません。だからこそ、家族全員を巻き込んで進める(兄弟での受託者の決め方)ことが、法的手順と同じくらい重要な紛争予防です
  • 間に合わなかった場合の残された選択肢も知っておきましょう:日常のお金は日常生活自立支援事業(社協)、本格的な財産管理は法定後見(成年後見の申立て方法市民後見人とは)、凍結前の少額対応は銀行の認知症サービス(銀行の認知症対策サービス)。「全部は無理でも、できることはある」が正しい認識です
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よくある質問(FAQ)

対策は何から始めればいいですか?優先順位は?

①財産の見える化(財産目録・財産目録テンプレート)②本人の意向確認(エンディングノート・エンディングノートの書き方)③「凍結対策」の選択——不動産や収益物件があるなら家族信託、預金中心なら代理人登録+任意後見の組み合わせも(家族信託と成年後見の違いで比較)④遺言(自筆証書遺言の書き方)——の順が標準です。①②は今日から0円でできます。③④の設計は財産構成次第なので、①ができた時点で専門家の無料相談に持ち込むのが最短です。

本人が「まだ早い」「縁起でもない」と嫌がります。

定番の壁です。効くのは正論ではなく入口の変更——「認知症対策」ではなく「入院や災害のときにお金を下ろせるようにしておく話」として持ちかける、子自身が先にエンディングノートを書いて見せる、銀行の代理人登録(銀行の認知症対策サービス)のような軽い手続きから始める、の3つが実績のある突破口です(詳細は親への切り出し方)。1回で決めようとせず、「考えておいて」で種をまき、次の帰省で再訪するペースが結局早道です。

すでに認知症と診断されています。もう何もできませんか?

程度によります。診断=即・契約不能ではなく、ごく軽度で契約内容を理解できる状態なら、公証人の意思確認を経て遺言等が作れた例は実務上あります(本文の慎重手順)。一方、それが難しい段階なら、法定後見(成年後見の申立て方法)・世帯全体での備え(配偶者や他の家族の対策を先に固める)・すでにある代理人カードや年金の管理体制の整備が現実的な打ち手です。可否の見極め自体が専門判断なので、諦める前に一度、面談での評価を受けてください。

まとめ

  • 締切は年齢ではなく判断能力。すべての対策は「本人が理解できるうち」だけ
  • 坂道は 元気→MCI→軽度→中等度。選択肢は坂を下るごとに減り、費用と紛争リスクは増える
  • 手遅れシグナル(同じ話の繰り返し・通帳紛失・請求書の放置)が出たら受診と対策を並行で今週
  • MCIでも慎重手順(診断書+公正証書+家族の合意)で可能な場合がある。諦める前に評価を

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

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