成年後見をやめたい|途中でやめられる?原則できない理由と例外・負担を減らす現実策
「専門職後見人への報酬がずっと続く」「家のお金なのに自由に使えない」「後見人と合わない」――成年後見を利用してから、やめたいと感じる家族は少なくありません。検索してこの記事にたどり着いた方の切実さを踏まえて、最初に正直な結論をお伝えします。
現行の制度では、成年後見は本人の判断能力が回復しない限り、家族の都合でやめることはできません。原則として本人が亡くなるまで続く制度です。ただし、「制度をやめる」ことと「今の不満を減らす」ことは別です。この記事では、やめられない理由と数少ない例外、不満の種類別にできる現実的な対処、2026年に成立した見直し法の状況、そしてまだ後見を始めていない家庭が取れる別の道を解説します。
なぜやめられないのか――制度の建て付け
- 成年後見は家族のための制度ではなく、判断能力を失った本人を保護するための制度です。「財産管理が面倒になったから」「報酬がもったいないから」という家族側の事情は、本人の保護を打ち切る理由にならない――これが家庭裁判所の一貫した立場です
- 後見開始の審判が取り消されるのは、本人の判断能力が回復したと医学的に認められた場合にほぼ限られます。認知症は現状回復が難しいため、実際の終了原因のほとんどは本人の死亡です
- 「使いたいときだけ使って、相続手続きが終わったらやめる」という利用はできません。預金の解約や遺産分割のために申し立てた後見も、目的の手続きが済んだ後も一生続きます
「やめる」に近づく数少ない例外
- ①本人の判断能力の回復:医師の診断書を添えて審判の取消しを申し立てます。脳梗塞後の一時的な意識障害からの回復など、限定的ですが実例はあります
- ②本人の死亡:後見は当然に終了し、後見人は管理計算をして相続人に財産を引き継ぎます
- ③審判前の取下げ:申立てをしたがまだ審判が出ていない段階なら、家庭裁判所の許可を得て取り下げられる可能性があります。「専門職が選ばれそうだから」という理由では許可されにくいものの、審判確定後は一切戻れないため、迷いがあるならこの段階が最後の分岐点です
不満の種類別・現実的な対処
不満①:報酬の負担が重い
専門職後見人の報酬は本人の財産から支払われ、目安は月2〜6万円。家族の家計から持ち出す必要はありません。本人の財産が少ない場合、報酬額もそれに応じて低く算定されます。資力が乏しい場合は、市区町村の成年後見制度利用支援事業による報酬助成の対象になることがあります。地域包括支援センターに確認を。
不満②:専門職後見人と合わない・対応が悪い
「解任」のハードルは非常に高く、不正行為・著しい不行跡など明確な義務違反が必要です。相性や態度への不満だけでは解任は認められず、解任されても家族が選ばれるとは限らず次の後見人が就くだけです。現実的な手順は、①後見人本人に書面で要望を伝える → ②改善がなければ家庭裁判所(後見係)に事情を伝える → ③後見監督人がいる場合はそちらへ。裁判所経由の指摘で対応が改善する例は実際にあります。
不満③:家族がやりたいのに専門職が就いた
親族が後見人に選ばれる割合は全体の2割前後にとどまります。いったん専門職が就いた後でも、流動資産が減って管理が単純になった段階で、親族後見人への交代(リレー方式)や親族の追加選任を家裁に相談できる運用があります。確約はありませんが、諦める前に一度相談する価値はあります。
2026年の見直し法と施行の時期
成年後見制度を「終われる制度」に見直す民法等の一部を改正する法律が、2026年6月17日に国会で成立し、6月24日に公布されました(令和8年法律第45号)。「後見」「保佐」「補助」の3類型を「補助」に一本化し、特定の目的(遺産分割・不動産売却など)が完了して家庭裁判所が必要性の消滅を認めた場合には、途中で利用を終了できる仕組みが新設される見込みです。
ただし、法律は成立しただけで、まだ施行されていません。システム改修や実務運用の整備に時間がかかるため、実際に新制度が使えるようになるのは早くても2028年頃と見込まれています。今この記事を読んでいる時点(2026年8月)では、本文で説明した現行ルール(原則やめられない)がそのまま適用されます。
まだ後見を始めていない家庭へ――「やめられない」を避ける道
- この記事を後見の申立て前に読んでいる方は、まだ選択肢があります。一度審判が確定すると後戻りできないため、申立ての前に代替手段を検討し尽くすことが何より重要です
- 親に判断能力があるうちなら:家族信託や任意後見で、管理する人・費用・やめ方を自分たちで設計できます。家族信託にはランニング費用がなく、途中の変更・終了も契約で可能です
- 目的が「預金を下ろす」だけなら:代理人カード・代理人登録や銀行の認知症対応サービスで足りるケースがあります。後見は最後の手段です
- すでに判断能力が失われている場合、法律上の選択肢は後見に限られます。その場合も申立て前に「何が起きるか」を正確に知ってから進んでください
よくある質問(FAQ)
後見人の報酬を払わなければ、自然に終了しませんか?
終了しません。報酬は家庭裁判所の審判に基づいて本人の財産から支払われるもので、家族が支払いを拒んでも制度は続きます。本人の財産が尽きた場合は報酬助成制度や報酬額の減額算定で対応される仕組みであり、「報酬の不払い」は後見を終わらせる手段にはなりません。
本人を施設から自宅に引き取れば、後見を外せますか?
外せません。後見の要否は本人の判断能力で決まり、住まいや介護体制は関係ありません。自宅介護に切り替えても、判断能力が回復しない限り後見は継続します。
家族信託に切り替えることはできますか?
できません。家族信託の契約には本人の判断能力が必要なため、すでに後見が開始している(=判断能力がないと認定されている)状態では契約できません。信託と後見の分岐点は「親が元気なうち」にしかありません。
まとめ
- 成年後見は本人保護の制度。家族の都合ではやめられず、原則本人の死亡まで続く
- 例外は本人の能力回復と審判前の取下げのみ。審判確定が最後の分岐点
- 不満には「やめる」以外の対処がある:報酬助成/家裁への相談/辞任・交代・リレー方式
- 2026年6月に「終われる制度」への改正法が成立したが、施行は2028年頃の見込み。現時点はまだ現行ルールが適用される
- 後見前の家庭は代替策の検討を先に。家族信託・任意後見は「元気なうち」しか選べない
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。