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遺産分割・相続トラブル

遺留分とは?誰にどれだけあるのか・計算例をわかりやすく解説

公開日 2026年8月16日 ・ 更新日 2026年8月23日 ・ 9分で読めます

「全財産を長男に相続させる」という遺言が出てきた。自分の取り分はゼロなのか――。結論からお伝えします。あなたが配偶者・子・親(直系尊属)のいずれかであれば、遺留分(いりゅうぶん)という最低限の取り分が法律で保障されており、遺言でも奪えません。侵害された分はお金で請求できます。ただし侵害を知ってから1年という短い期限があります。

一方、これから遺言を書く方にとって、遺留分は「知らずに書くと死後の紛争を生む」最重要の制約です。受け取る側・書く側の両方の視点で、仕組み・計算・実務を解説します。

遺留分の基本:誰に・どれだけ

遺留分がある人(配偶者・子・直系尊属)とない人(兄弟姉妹・甥姪)、遺留分の割合の計算式を示す図
図:遺留分 ― 誰に・どれだけ認められるか。侵害されたら金銭で請求でき、知ってから1年・相続開始から10年で消滅します。
  • ある人:配偶者・子(子が先に死亡していれば孫)・直系尊属(親・祖父母)
  • ない人:兄弟姉妹と甥姪。子のない夫婦が「全財産を配偶者へ」の遺言で完結できるのはこのためです
  • 割合:遺産全体の1/2(相続人が直系尊属だけなら1/3)を、各自の法定相続分で分けたものが個別の遺留分

計算例:遺産6,000万円・相続人が妻と子2人・遺言「全額を長男へ」

  1. 総体的遺留分=6,000万円×1/2=3,000万円
  2. 妻の遺留分=3,000万円×法定相続分1/2=1,500万円/二男=3,000万円×1/4=750万円
  3. 妻と二男は、長男に対して合計2,250万円を金銭で請求できる(長男は遺言どおり全財産を取得したうえで、お金で精算する)

2019年の法改正で、遺留分は「物を取り戻す権利」から「お金を請求する権利」(遺留分侵害額請求)に変わりました。不動産が自動的に共有になることはなく、「いくら払うか」の問題に一本化されています。

生前贈与も計算に入る

遺留分の計算のもとになる財産には、遺産だけでなく一定の生前贈与も加算されます。

  • 相続人への贈与(特別受益):相続開始前10年以内の分(婚姻・生計の資本としての贈与)
  • 相続人以外への贈与:原則1年以内の分(当事者双方が遺留分を害すると知っていた贈与は期間無制限)

「生前に長男へ移し切れば遺留分を回避できる」という発想は基本的に通用しません。家族信託を使った回避スキームも効力が争われた裁判例があります。

侵害されたら:金銭で請求できる(概要)

遺留分を侵害された相続人は、遺言や贈与で財産を受け取った相手に対し、侵害額に相当するお金の支払いを請求できます(遺留分侵害額請求)。期限は侵害を知ってから1年と短く、内容証明郵便による意思表示で権利を保全するのが定石です。

内容証明の書き方・調停・訴訟までの具体的な進め方、そして請求された側の対応(支払期限の猶予など)は、実践ガイド「遺留分侵害額請求のやり方|内容証明の書き方・1年の時効・調停までの流れ」にまとめています。本記事では制度と計算の理解に集中してください。

遺言を書く側へ:遺留分に配慮した設計

  • 配分で配慮する:遺留分相当額は各相続人に残す設計が最も安全
  • 付言事項で理由と感謝を伝える(法的効力はないが請求の抑止に実務上効きます)
  • 生命保険の活用:死亡保険金は原則遺留分の計算外。請求に備える資金を特定の子に残す定番手法です(極端な額は例外的に算入され得ます)
  • 生前の遺留分放棄:家庭裁判所の許可を得れば生前放棄も可能ですが、放棄する側への相応の代償が実務上必要です
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よくある質問(FAQ)

遺留分は自動的にもらえるのですか?

いいえ。請求しなければ1円ももらえません。請求するかどうかも自由です(家族関係を優先して請求しない選択も当然あります)。

相続放棄と遺留分放棄は違うのですか?

別物です。相続放棄は死後に家裁へ申述(借金も含め一切引き継がない)、遺留分の生前放棄は家裁の許可制です。なお相続放棄をすれば遺留分もなくなります。

請求されそうな側です。どう備えればいいですか?

①遺産と贈与の資料を整理し金額の当たりをつける、②感情的対立を避け早期に金額協議へ、③保険金や手元資金で支払原資を確保、の3つです。金額が大きい場合は早めに弁護士へ。

まとめ

  • 遺留分は配偶者・子・親の最低保障。兄弟姉妹にはない
  • 原則1/2×法定相続分。生前贈与(相続人10年・他1年)も計算に入る
  • 請求はお金で。まず内容証明で1年の時効を止める
  • 書く側は、配分・付言・保険で「請求されない遺言」を設計する

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参考にした一次情報・公的資料

本記事の記述は、以下の法令・官公庁・公的機関の公表資料にもとづいています。制度や手数料は改正されることがあるため、最新の内容は各リンク先でご確認ください。

ご利用にあたって:本記事は一般的な情報提供です。金額の算定・請求の実行は弁護士にご相談ください(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)。