贈与契約書のひな形と書き方|110万円の暦年贈与で毎年作るべき理由と注意点
「親から毎年110万円ずつ贈与を受けることにした。契約書って必要なの?」――結論、口頭の合意でも贈与は法律上有効です。それでも、贈与契約書は必ず作るべきです。理由はシンプルで、書面がない贈与は、後から税務署にも他の相続人にも「なかったこと」にされやすいからです。
特に相続発生後の税務調査では、亡くなった方の預金の動きが過去にさかのぼって確認されます。そこで贈与の証拠が示せないと、子や孫の名義になっていても実質は被相続人の財産(名義預金)と認定され、相続財産に足し戻されてしまいます。せっかく10年かけて贈与したつもりが、丸ごと課税対象に逆戻り――これが最悪のシナリオです。
この記事では、贈与契約書に必ず書く5項目と文例、毎年作るべき理由、やってはいけないNGパターンまで、生前贈与の実務をまとめて解説します。
贈与契約書に必ず書く5つの項目【文例つき】
贈与契約書はA4用紙1枚で足ります。次の5項目が特定できていれば形式は自由です。
- 誰が(贈与者):住所・氏名
- 誰に(受贈者):住所・氏名
- 何を(贈与財産):「現金 金1,100,000円」のように金額を明記
- いつ・どうやって(時期と方法):「令和〇年〇月〇日までに、受贈者名義の下記口座に振り込む方法により交付する」
- 双方の合意:贈与者・受贈者それぞれの署名・押印(自署が望ましい)
本文の文例
「贈与者〇〇〇〇(以下「甲」という)と受贈者〇〇〇〇(以下「乙」という)は、次のとおり贈与契約を締結する。第1条 甲は、現金金1,100,000円を乙に贈与するものとし、乙はこれを受諾した。第2条 甲は、前条の贈与財産を、令和〇年〇月〇日までに、乙が指定する銀行口座に振り込む方法により交付する。」
日付は「契約日」と「実際に振り込んだ日」が近接していることが望ましく、契約書の作成→振込の順番を守ってください。
未成年の孫に贈与する場合
受贈者が未成年の場合は、親権者(父母)が法定代理人として受諾し、署名します。「孫本人が知らない贈与」は名義預金と認定される典型例のため、代理受諾の形式を必ず整えてください。
なぜ「毎年・その都度」作るのか
暦年贈与(年間110万円の基礎控除内の贈与)を続ける場合、契約書は毎年、その年の贈与ごとに作成します。理由は2つあります。
理由① 定期贈与と認定されないため
最初に「毎年110万円を10年間贈与する」という約束をしてしまうと、それは「総額1,100万円の定期金給付契約」とみなされ、約束した年に総額へ一括で贈与税が課されるおそれがあります。あくまで「今年、たまたま110万円を贈与した」を毎年独立して繰り返す形にする――そのための毎年の契約書です。
理由② 名義預金と認定されないため
贈与の成立には「あげた・もらった」の双方の認識と、受贈者が財産を自分で管理している実態が必要です。契約書+振込記録+受贈者自身による通帳・印鑑の管理。この3点セットが揃っていれば、名義預金の認定リスクは大きく下がります。
よくあるNGパターンと対処
| NGパターン | 何が問題か・どうすべきか |
|---|---|
| 現金手渡し・契約書なし | 証拠が残らず名義預金認定の典型。契約書+振込に切り替える |
| 通帳・印鑑を親が保管 | 受贈者が管理していない=贈与不成立と見られる。受贈者本人の管理へ |
| 「10年分まとめて」の約束 | 定期贈与認定のおそれ。毎年独立の契約に |
| 契約書の日付を過去にさかのぼって作成 | バックデートは私文書偽造等の重大な問題。作れていなかった年は正直にあきらめ、今年から整える |
| 死亡直前の駆け込み贈与 | 相続開始前の一定期間(改正により順次7年へ延長)の贈与は相続財産に加算される。早く始めるほど有利 |
贈与税のきほん:110万円と最近の改正
- 暦年課税:受贈者1人あたり年間110万円までの贈与は贈与税がかからない(複数人から受けた場合は合算で判定)
- 110万円を超えた場合:超えた部分に贈与税。あえて111万円を贈与して少額の申告・納税を行い、贈与の記録を残す実務もあります
- 生前贈与加算:相続人等への贈与は、相続開始前の一定期間分が相続財産に加算されます。従来の3年から段階的に7年へ延長される改正が進行中のため、対策は早いほど有利です
- 相続時精算課税:2024年以降は年110万円の基礎控除が設けられ使い勝手が向上しましたが、一度選択すると暦年課税に戻れません。選択は税理士に相談を
税制は改正が続いている領域です。金額の大きい贈与や不動産の贈与を検討する場合は、実行前に税理士への相談をおすすめします。
認知症対策としての生前贈与:家族信託との使い分け
生前贈与は「渡した分だけ」が対策になる点に注意してください。年110万円ずつでは、親の主要な財産(自宅や数千万円の預金)を守り切る前に、認知症による資産凍結が先に来るリスクがあります。
- 生前贈与が向く:相続税の圧縮、子や孫への計画的な資金移転
- 家族信託が向く:自宅と老後資金を「親のために使える状態」のまま凍結から守る
実務では「老後資金と自宅は家族信託で守り、余裕資金を暦年贈与で移す」という併用が定石です。凍結対策の全体像は「認知症で親の銀行口座が凍結される?」の記事をご覧ください。
贈与契約書を無料でつくる
金額と当事者を入力するだけで、この記事の5項目を満たした契約書が数分で完成します(登録不要)。毎年の贈与のたびに、ブックマークからすぐ作成できます。
よくある質問(FAQ)
贈与契約書は手書きでもいいですか?
手書きでもパソコン作成でも有効です。ただし署名は本人の自署にしておくと、本人の意思で贈与した証拠として強くなります。
収入印紙は必要ですか?
現金の贈与契約書には印紙は不要です。不動産の贈与契約書には200円の印紙が必要です。
契約書は2通作るのですか?
贈与者・受贈者が1通ずつ保管できるよう2通作成(または1通+コピー)が一般的です。税務調査で提示を求められるのは主に受贈者側です。
過去の贈与の契約書を今から作れますか?
日付をさかのぼった作成(バックデート)は絶対にしてはいけません。過去分は振込記録等の客観資料で説明できるよう整理し、今年の贈与から契約書を整えてください。
まとめ:契約書・振込・受贈者管理の3点セットを毎年
- 贈与契約書は5項目が書けていればA4一枚で足りる
- 「毎年その都度作る」ことが定期贈与・名義預金の認定を防ぐ
- 契約書+振込記録+受贈者本人の管理、の3点セットで証拠を残す
- 贈与は本人の判断能力があるうちしかできない。家族信託との併用で凍結リスクもカバーを
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。