ホームゾウゾクノート / 遺言書3種類の違いを比較

遺言書の付随書類

遺言書3種類の違いを比較|自筆証書・公正証書・秘密証書はどれを選ぶべき?

公開日 2026年8月23日 ・ 更新日 2026年8月23日 ・ 9分で読めます

法律で認められた普通方式の遺言書は、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類です。どれを選んでも法的効力は同じですが、費用・手間・無効になるリスク・発見されやすさがまったく違います。

この記事は「どれを選ぶか」を決めるための比較記事です。選んだ後の具体的な作り方は、「自筆証書遺言の書き方」「公正証書遺言の作り方」の各記事へ進んでください。

3種類の比較一覧表

自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言
作り方全文・日付・氏名を自書し押印(財産目録はパソコン可)公証人が作成、本人が口授・確認本人が作成(パソコン・代筆可)し、封印して公証人に提出
費用の目安0円
(保管制度利用なら3,900円)
数万円〜
(財産額による手数料。早見表
11,000円+証人謝礼
証人不要2人必要2人必要
家庭裁判所の検認必要
(法務局保管なら不要)
不要必要
方式不備で無効になるリスク高いほぼないある
(中身は誰もチェックしない)
紛失・改ざんの心配自宅保管ならあり
(法務局保管で解消)
なし(原本を公証役場保管)封印で改ざんは防げるが
保管は自己責任
内容の秘密守れる公証人・証人には知られる守れる(存在だけ証明)
年間の利用規模多い(保管制度は年2万件前後)年11万件前後年100件前後でほぼ利用なし

自筆証書遺言|手軽さ最優先+保管制度で弱点補強

向いている人:費用をかけず今日から備えたい人、内容がシンプルな人、まず一度書いてみたい人。

紙とペンと印鑑があれば0円で作れるのが最大の強みです。弱点は①方式不備・内容の不明確さで無効になりやすい、②発見されない・改ざんされるおそれ、③死後に検認(手続きの解説)が必要の3つ。このうち②③は、法務局の自筆証書遺言書保管制度(1通3,900円)を使えば解消できます──保管時に形式面のチェックも受けられ、検認も不要になります(保管制度の使い方)。

「自筆+法務局保管」は、実質的に3種類に次ぐ第4の選択肢であり、費用と確実さのバランスで現在もっとも注目される組み合わせです。ただし①の「内容が法的に適切か」は保管制度ではチェックされないため、書き方のルールは必ず押さえてください(無効にならない4つのルール)。

公正証書遺言|確実さ最優先

向いている人:相続人間に対立の芽がある人、財産が多い・構成が複雑な人、高齢や病気で遺言能力を後から争われたくない人、自書が難しい人。

法律のプロである公証人が作成するため方式不備がほぼなく、原本は公証役場に保管され、検認も不要。「争いになりそうな家庭ほど公正証書」が実務の定石です。弱点は費用(財産額に応じた手数料)と、証人2人の手配を含む2〜4週間程度の準備期間です。費用は「手数料の早見表」、作成の段取り・証人の探し方は「作り方ガイド」をご覧ください。

秘密証書遺言|なぜ、ほぼ使われないのか

秘密証書遺言は、内容を秘密にしたまま「遺言書が存在すること」だけを公証人に証明してもらう方式です。本人が作成した遺言書(パソコン・代筆でも可)を封印し、公証役場で本人と証人2人の前で手続きします(手数料は定額11,000円)。

年間100件前後にとどまる理由

中身は誰もチェックしないため、開けてみたら方式不備・内容不明確で使えないリスクが自筆と同じまま残る、②なのに証人2人と公証役場の手間・費用はかかる、③保管は自己責任で紛失リスクも残る、④死後は検認も必要──つまり自筆と公正証書の「弱点だけを集めたような立ち位置」になりやすいのです。内容の秘密が目的なら、自筆+法務局保管(職員も内容には関与しません)でほぼ代替できます。

唯一の固有メリットは「自書できなくても、内容を秘密にできる」こと。パソコンでしか書けない事情があり、かつ公証人にも内容を知られたくない、という限定的な場面で検討の余地がある方式です。

選び方フローチャート

遺言書を作りたい 相続人どうしが揉める心配や 遺言の有効性を争われる不安がある? ある 公正証書遺言 確実さでトラブルを封じる 費用:数万円〜 ない 全文を自分の手で書ける? 書ける 自筆証書遺言 +法務局保管(3,900円)推奨 紛失・改ざん・検認の弱点を解消 書けない 内容を公証人にも 知られたくない? はい 秘密証書遺言を検討 ※専門家の下書き支援を推奨 いいえ → 公正証書遺言(口授で作成できる)
図1:選び方の目安。迷ったら「揉める不安の有無」が最初の分かれ道です。

どれを選んでも変わらないこと(共通の注意)

① 法的効力は同じ──公正証書だから内容が優先される、ということはありません。複数の遺言があれば方式に関係なく日付の新しいものが優先されます(効力のルール)。
② 遺留分は侵害できない──どの方式でも、相続人の遺留分を奪うことはできません(遺留分とは)。
③ 中身の設計がすべて──方式選びより大切なのは「誰に・何を・どう残すか」と遺言執行者の指定です(文例10選遺言執行者とは)。
④ 書き直しはいつでも自由──家族構成や財産が変わったら見直します。「一度きりの決断」と気負う必要はありません。

よくある質問

「遺書」とは違うのですか?

違います。遺書は気持ちを伝える私的な手紙で法的効力はなく、遺言書は財産の行き先を法的に決める文書です。詳しくは「遺書と遺言書の違い」をご覧ください。

まず自筆で書いて、あとで公正証書に作り直せますか?

できます。むしろ王道の進め方です。自筆(+保管制度)でいったん備え、財産が増えたり対立の芽が見えたりした段階で公正証書に格上げする──内容が固まっているぶん、公証役場との打合せも速く済みます。

夫婦で1通の遺言書を作れますか?

できません(共同遺言の禁止)。同じ内容でも、必ず1人1通ずつ作成してください。夫婦連名で書いた遺言は方式違反で無効になります。

動画やパソコンで作った遺言は有効ですか?

現在の法律では、動画・音声の遺言や全文パソコン打ちの自筆証書遺言は無効です(自筆証書で本文はすべて自書が必要。財産目録のみパソコン可)。パソコンで作りたい場合は公正証書または秘密証書の方式によることになります。

方式を選んだら、まず下書きから始めましょう

「誰に・何を」を決める下書きは、どの方式でも共通の第一歩。ステップに沿って入力するだけで、無料で作成できます。

あわせて読みたい

この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な制度解説であり、個別の事情に応じた法的助言を行うものではありません。手数料・利用件数などの数値は目安・傾向であり、変更されることがあります。方式の選択に迷う場合は、公証役場・司法書士・弁護士へご相談ください。(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)