公正証書遺言の作り方|証人2人の探し方・必要書類・公証役場当日の流れ
公正証書遺言は、公証人が作成する最も確実な遺言です。方式不備で無効になる心配がほぼなく、原本は公証役場に保管され、家庭裁判所の検認も不要──ただし、「公証役場に行けばその場で作れる」ものではありません。事前の準備と打合せが本体です。
この記事では、下書き → 事前打合せ → 当日の3段階の進め方を、証人の要件・必要書類とともに解説します。手数料がいくらかかるかは「公正証書遺言の費用はいくら?」に早見表があります(本記事では費用には触れません)。
全体の流れ|3段階・2〜4週間が目安
STEP1:内容を固める(下書きと財産の整理)
公証人は法律の形式を整えるプロですが、「誰に何を渡すか」を決めるのは本人です。打合せを速く正確に進めるため、次の2つを先に用意します。
① 財産目録──不動産・預貯金・有価証券・保険を一覧化します。財産目録の無料作成ツールで書き出すと、渡し漏れを防げます。
② 遺言の下書き──「自宅は妻に、◯◯銀行の預金は長男に」というレベルまで具体化し、あわせて遺言執行者(手続きを実行する人。役割はこちら)と、予備的遺言(受取人が先に亡くなった場合の行き先)まで決めておくと、打合せが一度で済みます。文例の考え方は遺言書の文例10選が参考になります。下書き自体は遺言書作成ツール(無料)で作れます。
「全財産を一人に」という内容は作成できますが、他の相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性が残ります(遺留分とは)。配分に偏りがある場合は、付言事項で理由を添えることも下書き段階で検討しましょう。
STEP2:公証役場との事前打合せ
最寄りの公証役場に電話やメールで相談予約を取り、下書きと必要書類(次章)を渡します。以降は、公証人が法的に有効な案文を作成し、メール・郵送・面談でやり取りしながら内容を確定していきます。打合せは本人のほか、家族や依頼した専門家が代行することも可能です(ただし当日は本人が必須)。案文が確定したら、作成日時を予約し、手数料の金額を確認します。
証人2人のルール|家族はなれない・探し方3つ
公正証書遺言の作成には証人2人の立会いが必須です。ここで最も多いつまずきが、証人の資格です。
| 証人になれない人(欠格者) | 理由 |
|---|---|
| 推定相続人(配偶者・子など)・受遺者 | 遺言の利害関係者だから。「妻と長男に立ち会ってもらう」は不可です |
| 上記の配偶者・直系血族(子の妻、孫など) | |
| 未成年者 | 判断能力の観点から |
| 公証人の配偶者・四親等内の親族、書記・使用人 | 中立性の観点から |
つまり財産を受け取る側とその家族は全員アウト。探し方は次の3つです。
① 公証役場に紹介を依頼する──ほとんどの公証役場で証人の紹介に対応しています(謝礼の目安は1人5千円〜1万円程度)。身近に頼める人がいなければ、これが最も簡単です。
② 依頼した専門家に頼む──司法書士・行政書士等に案文作成を依頼した場合、事務所側で証人2人を用意するのが通例です。守秘義務があるため内容を知られる不安もありません。
③ 利害関係のない知人に頼む──友人・同僚などでも可能ですが、遺言の内容をすべて聞かれる点は理解しておきましょう。
必要書類の一覧
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 本人確認資料(印鑑登録証明書+実印、または運転免許証等) | 印鑑証明書は発行後3か月以内が目安 |
| 本人と相続人の続柄がわかる戸籍謄本 | 財産を相続人に渡す場合 |
| 受遺者の住民票 | 相続人以外(お世話になった人・団体等)に遺贈する場合 |
| 不動産:登記事項証明書+固定資産評価証明書(または課税明細書) | 物件の特定と手数料の算定に使用 |
| 預貯金等:通帳のコピーなど金融機関・支店がわかる資料 | 残高そのものより「特定できる情報」が重要 |
| 証人2人の氏名・住所・生年月日・職業のメモ | 紹介を頼む場合は不要 |
| 遺言執行者の特定資料(住民票など) | 専門家や家族を指定する場合 |
戸籍の集め方は「相続で必要な戸籍の集め方」を参照してください。必要書類は事案により増減するため、最終的には打合せ時の公証役場の指示が正です。
STEP3:当日の流れ|読み聞かせから署名押印まで
| 順番 | 当日にすること(所要30分〜1時間程度) |
|---|---|
| 1 | 本人確認・証人の確認──実印と印鑑証明書等で本人確認。証人2人も身分証を提示 |
| 2 | 遺言内容の口授・確認──公証人が本人に意思を確認します。本人が自分の言葉で答えられることが大前提です |
| 3 | 読み聞かせ(または閲覧)──公証人が遺言書を読み上げ、本人と証人が内容の正確さを確認 |
| 4 | 署名・押印──本人(実印)と証人2人(認印可)が署名押印。病気等で署名できない場合は公証人が事由を付記して代署できます |
| 5 | 正本・謄本の受領と手数料の支払い──原本は公証役場に保管され、本人には正本・謄本が交付されます |
公証人は病院・施設・自宅への出張作成に対応しています(その公証人の所属する都道府県内に限る・手数料は加算)。ただし、判断能力が明らかに低下してからでは、公証人が作成を断らざるを得ないケースもあります。「体力があるうち・判断がはっきりしているうち」が唯一の適齢期です(対策はいつから始める?)。
作った後|保管・検索・書き直し
保管──原本は公証役場が長期保管するため、紛失・改ざん・隠匿の心配がありません。手元の正本・謄本は、遺言執行者や信頼できる家族に保管場所を伝えておきます。
検索──相続開始後、相続人等は遺言検索システムにより、全国の公正証書遺言の有無を照会できます。「作ったことだけ家族に伝えておく」だけでも、発見されないリスクはなくなります。
書き直し──内容を変えたくなったら、新しい遺言を作り直すのが原則です。抵触する部分は日付の新しいものが優先されます(遺言書の効力のルール)。家族構成や財産が変わったら見直しのタイミングです。
よくある質問
公証役場は住所地のところに行く必要がありますか?
全国どこの公証役場でも作成できます。職場の近くなど、通いやすい役場を選んでかまいません。出張作成だけは、その公証人の管轄都道府県内に限られます。
自筆証書遺言とどちらにすべきか迷っています。
費用ゼロで今日書ける自筆か、確実性の公正証書か、という比較になります。相続人間に対立の芽がある・財産が多い・高齢で遺言能力を争われたくない場合は公正証書が適します。書き方の違いは「自筆証書遺言の書き方」を、費用の比較は「公正証書遺言の費用」をご覧ください。
公証人に相談すれば、財産の分け方のアドバイスももらえますか?
公証人は中立の立場のため、「どう分けるのが得か・揉めないか」の設計相談は業務外です。節税や遺留分対策を含めた設計は、司法書士・弁護士・税理士に相談してから公証役場に持ち込むのが効率的です(専門家費用の相場)。
認知症の診断を受けた親でも作れますか?
診断名だけでは決まらず、作成時に内容を理解できる判断能力(遺言能力)があるかによります。公証人が面談で確認し、必要に応じて医師の診断書を求める運用もあります。迷っている場合は、できるだけ早く公証役場に相談してください。
公証役場に持ち込む「下書き」を、無料でつくれます
ステップに沿って入力するだけで、遺言執行者・予備的遺言まで入った下書きが完成。そのまま公証役場との打合せ資料に使えます。
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。