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生前の備え

後見制度支援信託・支援預金とは?家裁から勧められたら

公開日 2026年9月11日 ・ 更新日 2026年9月11日 ・ 9分で読めます

親の成年後見人に子がなろうとすると、家庭裁判所から「後見制度支援信託(または支援預金)の利用を検討してください」と言われることがあります。要点は一つ——親のまとまった財産を、家族の後見人が自由に動かせない形で預ける仕組みです。

仕組み、設定の流れと費用、家庭裁判所の求めを断れるのか、「後見にならない備え」である家族信託との違いを整理します。成年後見の費用全般は「成年後見制度の費用はいくら?」をどうぞ。

この記事の要点

①本人の財産のうち日常に必要な分だけを後見人が管理し、残りを信託銀行(信託)や銀行・信用金庫(預金)に預けて、家庭裁判所の指示書がなければ引き出せなくする仕組み ②目的は家族後見人の使い込み防止。対象は成年後見と未成年後見で、保佐・補助・任意後見では使えない ③設定は専門職が一時的に後見人に就いて財産を調査し、信託・預金を設定してから家族に引き継ぐ。専門職への報酬は10万〜30万円程度 ④利用は義務ではないが、断ると専門職後見人や監督人がつく形になることが多い。後見が始まる前なら家族信託で後見自体を避けられる場合がある

仕組み——「日常の分」と「まとまった分」を分けて預ける

後見制度支援信託は、成年後見が始まった後に、本人の預貯金などのうち、日常的な支払いに必要な金額だけを後見人の手元に残し、残りを信託銀行に信託する仕組みです。信託した財産は元本が保証され、後見人が引き出すには家庭裁判所が発行する「指示書」が必要になります。定期的に一定額を後見人の口座へ送金する設定もできます。

後見制度支援預金は、同じ仕組みを銀行・信用金庫などの預金で行うもので、2018年から広がりました。信託の手数料を避けたい場合の受け皿です。どちらも、後見人が管理する財産を「日常の分」に絞り、まとまった財産が後見人の判断だけで動かない状態を作ります。

なぜ勧められるのか——対象と目的

項目内容
目的家族後見人による使い込みの防止。専門職や監督人を付けずに家族が後見人を続けられるようにする仕組み
対象になる類型成年後見(後見類型)と未成年後見のみ。保佐・補助・任意後見では使えない
対象になる財産金銭(預貯金)のみ。不動産・株式・保険は対象外で、これらは後見人が管理を続ける
検討を求められる場面家族を後見人候補として申し立て、本人に一定額以上(数百万〜1,000万円程度がめやす)の預貯金がある場合
利用しない場合専門職が後見人になる、家族後見人に後見監督人が付く、といった形で第三者のチェックが入ることが多い
後見制度支援信託・支援預金の概要(2026年8月時点。運用は家庭裁判所ごとに異なる)。

背景には家族後見人による使い込みの事案があります。家族に任せたい一方で、まとまった財産を家族の判断だけに委ねることへの懸念——その折衷案がこの仕組みです(「法定後見の3類型」)。

設定の流れと費用——専門職が先に就任する

  1. 家庭裁判所が利用の検討を求める——後見開始の審判の際、または後見人選任後に判断される
  2. 専門職後見人が就任する——弁護士・司法書士などが一時的に後見人(または家族と並ぶ後見人)に就き、財産・収支を調査して、信託・預金する金額と手元に残す金額を決める
  3. 報告書を提出し、指示書を受ける——家庭裁判所が確認して指示書を発行
  4. 信託契約・預金口座の設定——専門職後見人が金融機関で手続き
  5. 専門職が辞任し、家族後見人に引き継ぐ——以後は家族が日常の管理を行い、まとまった支出は指示書を求める

費用は専門職後見人への報酬(家庭裁判所が決定。10万〜30万円程度が多い)と、信託の場合は信託銀行の手数料です。支援預金は手数料がかからないか低額の金融機関が多く、この点で選ばれることがあります。設定後に専門職の報酬は発生せず、いずれも本人の財産から支払われます。

断れるか・家族信託との違い

利用は法律上の義務ではありません。ただし求めに応じない場合、家族だけが後見人になる形は認められにくく、専門職後見人か後見監督人の選任という形でチェックが入るのが実情です。監督人が付けば月1万〜3万円程度の報酬が続くため、一度きりの費用で済む支援信託・支援預金のほうが長期的には軽いこともあります。

大口の支出のたびに理由と見積りを添えて指示書を申請し、待つことになる使いにくさは事実です。この不自由さを避けたいなら、後見が始まる前——本人に判断能力があるうちに家族信託で財産管理を設計しておくのが唯一の道です。家族信託なら、受託者である子が契約で定めた範囲で財産を管理でき、家庭裁判所の関与はありません(「家族信託と成年後見制度の違い」)。すでに判断能力が失われていれば後見しか選べず、支援信託・支援預金は「家族が後見人を続けるための条件」と受け止めるのが現実的です。

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よくある質問(FAQ)

支援信託を設定した後、親の介護施設の入居一時金が必要になりました。

家庭裁判所に「指示書の発行申請」をして、信託財産から必要額を払い出します。入居契約書や見積書を添えて申請し、家庭裁判所が確認して指示書を出します。数週間程度かかるため、入居の話が出た段階で早めに動いてください。日常の生活費は、設定時に「毎月一定額を後見人口座へ送金」と定めておけば、そのつど申請する必要はありません。

保佐や補助でも支援信託は使えますか?

使えません。対象は成年後見(後見類型)と未成年後見だけです。保佐・補助は本人の判断能力が残っていることを前提に必要な行為だけを支援する類型のため、財産全体を信託に移す仕組みにはなじまないとされています。任意後見も対象外です。保佐・補助で家族が就く場合は、監督人の選任や家庭裁判所への定期報告でチェックが行われます。

親の財産は不動産が中心で、預金は少ないです。それでも勧められますか?

対象は金銭だけなので、預貯金が少ない場合は利用を求められないことが多いです。不動産や株式は後見人が管理を続け、売却は別途家庭裁判所の許可(居住用不動産)や報告が必要です。預貯金が少なくても、不動産の管理をめぐって専門職後見人や監督人が付くことはあります。

家族信託をしていれば、支援信託は関係ありませんか?

家族信託で受託者が管理している財産は、本人の判断能力が失われても受託者が管理を続けるため、その財産について成年後見の申立てが不要になることが多く、支援信託の対象にもなりません。ただし家族信託は財産管理の制度であり、施設入所の契約や医療の同意といった身上監護はできません。身上監護のために成年後見を申し立てると、信託に入れていない預貯金について支援信託を求められる可能性はあります。信託で管理する財産の範囲と、後見が必要になる場面を、設計の段階で整理してください。

まとめ

後見制度支援信託・支援預金は、本人の預貯金を「日常の分」と「まとまった分」に分け、後者を家庭裁判所の指示書なしには動かせなくする仕組み——家族後見人の使い込みを防ぎ、家族が後見人を続けるための条件です。対象は成年後見と未成年後見、財産は金銭のみ。設定には専門職が一時的に就任し、報酬10万〜30万円程度。断ると専門職後見人や監督人が付く形になりがちです。不自由さを避ける道は、判断能力があるうちに家族信託と任意後見で備えること——後見が始まってからでは選べません。

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

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