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生前の備え

法定後見の3類型(後見・保佐・補助)の違い|判断能力のどの段階で何が使えるか

公開日 2026年8月23日 ・ 更新日 2026年8月23日 ・ 9分で読めます

法定後見は一つの制度ではなく、本人の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3類型に分かれます。どの類型になるかで、援助者にできること(代理権・同意権・取消権)と本人に残る自由がまったく違います

この記事は「うちの親はどの類型にあたるのか」「その類型で何ができるのか」の判定に特化します。申立ての手続き・必要書類・期間は「成年後見の申立て方法」を、制度の全体像(任意後見との違い)は「後見人制度とは?」をご覧ください。

3類型は「判断能力のグラデーション」で決まる

判断能力:十分 判断能力:欠けているのが通常 支援は不要 補助 保佐 後見 補助=判断能力が不十分 日常はほぼ自分でできるが 難しい契約は不安が残る 支援は「一部だけ」 保佐=著しく不十分 日常の買い物はできるが 不動産売買・借金は困難 重要行為をチェック 後見=常に困難 日常の買い物も 一人では難しい ほぼ全面的に代理 ※ 境界の判定は診断書等をもとに家庭裁判所が行います(本人・家族が選ぶものではありません)
図1:判断能力のグラデーションと3類型。右へ行くほど援助者の権限が広がり、本人の自由は狭まります。

大切なのは、類型は「症状の名前」ではなく「支援の強度」だということです。認知症だから後見、というわけではなく、同じ病名でも進行度によって補助・保佐・後見のいずれにもなり得ます。

鍵になる3つの権限|代理権・同意権・取消権

3類型の違いを理解する鍵は、援助者に与えられる次の3つの権限です。

権限意味たとえるなら
代理権本人に代わって契約などを行う権限本人の「手足」になって動く
同意権本人が重要な契約をするとき、援助者の同意を必要とさせる権限契約の前の「チェック役」
取消権同意なく行われた契約などをあとから取り消せる権限悪質商法から守る「巻き戻しボタン」

この3つが「どの範囲に・自動で付くのか、申立てで選んで付けるのか」が、類型ごとの違いの正体です。

類型別のちがい早見表

補助保佐後見
本人の状態判断能力が不十分著しく不十分欠けているのが通常
援助者の名称補助人保佐人成年後見人
同意権・取消権申立てで選んだ行為のみ重要行為に自動で付く
(民法13条1項)+追加可
日常生活の行為を除き
ほぼ全面
代理権申立てで選んだ行為のみ
※本人の同意が必要
申立てで選んだ行為のみ
※本人の同意が必要
財産に関するほぼ全面
開始への本人の同意必要不要不要
本人に残る自由大きい中程度小さい
読み方のポイント

右の類型ほど「守り」は強く、そのぶん本人の自己決定は制限されます。だからこそ家庭裁判所は、必要以上に重い類型を選ばない運用をしています。「心配だから後見にしてほしい」という希望どおりにはならないのが原則です。

後見|ほぼ全面的に守る類型

対象:判断能力が欠けているのが通常の状態(例:重度の認知症で、日常の買い物も一人では難しい)。

できること:成年後見人は、預貯金の管理・介護契約・不動産の管理など財産に関するほぼすべての法律行為を代理できます。また、本人が行った不利益な契約は、日用品の購入など日常生活に関する行為を除いて取り消せます

注意点:本人の自宅(居住用不動産)を売却・賃貸するには、代理権があっても家庭裁判所の許可が別途必要です。また、印鑑登録が抹消される、一部の資格・地位に影響が出るなど、生活面の変化も伴います。財産は本人のためだけに使う原則が徹底されるため、相続税対策などの自由は事実上なくなります(この点の詳細は後見人制度とは?)。

保佐|重要な行為だけチェックする類型

対象:判断能力が著しく不十分な状態(例:日常の買い物はできるが、お金の貸し借りや不動産の売買を一人で判断するのは難しい)。

しくみ:民法13条1項が定める重要な行為について、保佐人の同意が必要になります。代表例は次のとおりです。

保佐人の同意が必要になる行為の代表例(民法13条1項より)
・借金をする、保証人になる・不動産など重要な財産の売買
・訴訟を起こす・贈与する、和解する
・相続の承認・放棄、遺産分割・新築・改築・大修繕の契約

同意なく行われたこれらの行為は取り消せます。さらに、必要に応じて特定の行為の代理権を申立てで付けられます(本人の同意が必要)。「通帳は本人が持ちつつ、不動産売却だけ保佐人が代理する」といった設計が可能です。

補助|本人の同意で必要な部分だけ支える類型

対象:判断能力が不十分な状態(例:おおむね自分で判断できるが、高額契約や施設の入所契約には支えがほしい)。

しくみ:補助は「オーダーメイドの最小限支援」です。同意権・取消権も代理権も自動では付かず、申立てで選んだ特定の行為だけに設定します。しかも、開始そのものに本人の同意が必要で、本人の意思を最も尊重する類型です。

向くケース:軽度認知障害(MCI)の段階で、悪質な訪問販売や高額契約だけ防ぎたい場合など。逆に言えば、この段階なら任意後見や家族信託という「本人が選ぶ」選択肢がまだ残っている可能性があります。比較検討は「家族信託と成年後見制度の違い」をご覧ください。

類型は誰がどう決める?診断書と鑑定

類型を選んで申し立てるのは申立人ですが、最終的に決めるのは家庭裁判所です。判断の中心資料は、成年後見制度用の様式で作成された医師の診断書です。診断書の記載と申立て類型が食い違う場合や、判断能力の程度に争い・疑義がある場合には、医師による鑑定(費用の目安10〜20万円程度)が行われることがあります。

申立て前に知っておくべきこと

申し立てた類型と違う類型で開始されることや、いったん始まると本人の判断能力が回復しない限り途中でやめられないのが原則であることは、事前に必ず押さえてください(成年後見をやめたい)。診断書の取得手順を含む申立ての流れは「成年後見の申立て方法」にまとめています。

よくある質問

親は要介護3ですが、類型はどれになりますか?

要介護度と類型は直接は連動しません。要介護度は身体介護の必要度も含む指標で、類型はあくまで「判断能力」で決まります。まずは主治医に成年後見制度用の診断書を相談してください。

症状が進んだら、保佐から後見に変わりますか?

自動では変わりません。判断能力がさらに低下した場合は、改めて後見開始の審判を申し立てることで類型を移行します。

補助や保佐でも、銀行口座の凍結は解除できますか?

金融機関の対応は権限の内容によります。預貯金取引の代理権が付与されていれば、審判書等を示して取引できるのが一般的です。同意権だけでは本人に代わった払戻しはできません。

3類型のどれでも、家族が援助者になれますか?

どの類型でも家族が選ばれる可能性はありますが、決めるのは家庭裁判所です。財産額や親族間の事情によっては専門職が選任されます(成年後見人の報酬相場)。

「まだ補助にも至らない」今こそ、選べる備えを

法定後見は判断能力が落ちた後の最終手段。元気なうちなら、財産管理を家族に託す設計を自分で選べます。まずは1分診断でチェック。

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な制度解説であり、個別の事情に応じた法的助言を行うものではありません。類型の判断は家庭裁判所が行うものであり、本記事の目安と異なる結論になることがあります。申立ての実務は司法書士・弁護士などの専門家にご相談ください。(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)