特別寄与料とは?義理の親を介護した「長男の嫁」がお金を請求できる制度|期限6か月
義理の親の介護を何年も担ったのに、嫁は相続人ではないから1円も受け取れない——長くそう言われてきた不公平を埋めるために、2019年の民法改正で生まれたのが特別寄与料です。相続人ではない親族(長男の嫁など)が、無償で故人の療養看護などに尽くした場合、相続人に対して金銭を請求できる制度。ただし相続人になれるわけではなく、あくまで「お金の請求権」で、期限もわずか6か月と短いのが特徴です。
この記事では、誰が・どんな場合に・いくら・どうやって請求するのかを整理します。なお相続人自身(実の子など)の貢献を評価する仕組みは「寄与分」という別制度です(寄与分とは)。本記事は「相続人ではない親族」の側を扱います。
①請求できるのは「相続人以外の親族」(長男の嫁が典型)。内縁のパートナー・友人・報酬を得ていた介護職は対象外 ②「無償で」「特別の寄与」をしたことが要件で、日常の手伝いレベルでは認められにくい。介護日誌などの記録が生命線 ③請求先は相続人。協議がまとまらなければ家庭裁判所へ——ただし相続開始と相続人を知ってから6か月以内(かつ相続開始から1年以内)の短い期限。受け取った特別寄与料には相続税(2割加算)がかかる
誰が請求できる?——寄与分との違い
| 寄与分 | 特別寄与料(本記事) | |
|---|---|---|
| 誰の制度? | 相続人(実の子など) | 相続人以外の親族(長男の嫁が典型) |
| 何がもらえる? | 遺産分割の中で取り分が増える | 相続人に対する金銭の請求権(遺産分割には参加しない) |
| 期限 | 遺産分割の中で主張 | 相続開始と相続人を知って6か月以内かつ相続開始から1年以内(家庭裁判所への申立て) |
「親族」とは6親等内の血族と3親等内の姻族。子の配偶者(嫁・婿)は姻族1親等なので対象ど真ん中です。逆に、内縁のパートナーは法律上の親族ではないため対象外(内縁の妻の相続で代替策を解説)。友人や、報酬を得ていた介護職・家政婦も対象外です。相続放棄をした人・相続欠格や廃除で相続権を失った人も請求できません(相続欠格・廃除)。
認められる条件——「特別の寄与」のハードル
要件は3つ——①無償で(対価をもらっていない) ②療養看護その他の労務の提供をし(介護・看病・家業の手伝いなど。金銭援助だけは対象外) ③それによって故人の財産が維持または増加したこと。たとえば「同居の嫁が数年間、要介護の義父を在宅介護し、施設費用やヘルパー費用の支出を免れさせた」は典型例です。
いくら・どうやって請求する?——6か月の期限
手順——①まず相続人との協議で金額を決める(合意できれば書面に残す) ②まとまらなければ家庭裁判所に「協議に代わる処分」を申し立てる。この申立てには相続開始と相続人を知った時から6か月以内、かつ相続開始から1年以内という短い除斥期間があります。相続の期限一覧の中でも指折りに短い期限なので、請求する気持ちがあるなら初動を急いでください。
金額——法律に定額基準はなく、実務では介護報酬相当の日当×介護日数×裁量割合といった計算が参考にされます。貢献の期間・程度により数十万円〜数百万円と幅があり、遺産総額を超えることはできません。相続人が複数いる場合、各相続人は法定相続分に応じた割合で負担します。なお請求は「争い」になりやすいテーマです。関係がこじれそうなら、単独で乗り込む前に弁護士への相談を(相続の相談はどこへ?)。
税金——受け取った特別寄与料は遺贈とみなされ相続税の対象(2割加算)。支払った相続人側は遺産から差し引けます(相続税の計算方法)。
確実なのは生前の備え——遺言・保険・養子縁組
正直なところ、特別寄与料は「最後の救済」であって、あてにして介護を引き受ける制度ではありません。ハードルが高く、期限が短く、義理の家族に金銭を請求する心理的負担も大きいからです。確実なのは、義父母が元気なうちの備え——選択肢は3つあります。
①遺言で遺贈する——「介護をしてくれた長男の妻◯◯に◯◯円を遺贈する」と書いてもらう(遺贈とは)。②生命保険の受取人にする——受取人固有の財産として確実に渡せます。③養子縁組をする——嫁を養子にすれば相続人そのものになれます(養子と相続)。介護の分担を決める家族会議の場で、この3つを一緒に話しておくことが、将来の「報われない」を防ぐ一番の方法です。
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遺言書をつくるよくある質問(FAQ)
特別寄与料の相場はいくらですか?
法律に定額の基準はなく、協議か家庭裁判所の判断で決まります。実務では介護報酬の日当額×介護日数×裁量割合といった計算を参考にすることが多く、献身の期間・程度によって数十万円〜数百万円まで幅があります。金額よりも先に、介護日誌・レシート・要介護認定資料など「無償で療養看護した事実」を示す記録を揃えることが、請求の成否を左右します。
内縁の妻や、介護をしてくれた友人・ヘルパーも請求できますか?
できません。特別寄与料を請求できるのは「相続人以外の親族」(6親等内の血族・3親等内の姻族)に限られます。内縁のパートナーは法律上の親族ではないため対象外で、友人や報酬を得ていた介護職も対象外です。内縁の場合は遺言による遺贈や生命保険の受取人指定など、生前の備えで手当てするしかありません。
特別寄与料を受け取ったら税金はかかりますか?
かかります。特別寄与料は税務上、遺贈で取得したものとみなされて相続税の対象になり、しかも配偶者・子・親以外の人として2割加算の対象です。受け取りが決まったら、その日を知った日から10か月以内に相続税の申告が必要になる場合があります。支払った相続人の側は、その分を遺産から差し引いて計算できます。
これから介護を担う立場です。特別寄与料をあてにしてよいですか?
あてにしないでください。特別寄与料は「特別の寄与」という高いハードルと短い期限があり、請求すれば必ずもらえる制度ではなく、義理の家族へ請求する心理的負担も現実には大きいものです。確実なのは生前の備え——義父母に遺言で遺贈を書いてもらう、生命保険の受取人にしてもらう、養子縁組をする、のいずれかです。介護を引き受ける前に、家族会議で話しておくことを強くおすすめします。
まとめ
特別寄与料は、相続人ではない親族——典型は長男の嫁——が、無償の介護・看病の貢献を金銭で請求できる制度です。相続人になれるわけではなく、ハードルは「特別の寄与」、武器は日々の記録、期限は知ってから6か月・相続開始から1年。受け取れば相続税(2割加算)の対象です。そして何より——この制度は最後の救済であって、報われる仕組みの本命は生前の遺言・保険・養子縁組にあります。介護が始まる前の家族会議、始まった日からの介護日誌。この2つを、今日の結論として持ち帰ってください。
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。