寄与分とは|親の介護をした分は相続で報われる?認められる条件・計算方法・特別寄与料
寄与分とは、亡くなった方(被相続人)の財産の維持や増加に「特別の寄与」をした相続人について、その貢献分だけ相続の取り分を増やす制度です(民法904条の2)。「10年間、私だけが親の介護をしてきた。兄と同じ取り分はおかしい」――この感覚に応えるための制度です。
ただし、最初に正直にお伝えします。家族による通常の介護や同居は「特別の寄与」とは認められにくく、寄与分のハードルは想像以上に高いのが実務の現実です。この記事では、認められる条件と計算を正確に示したうえで、争って勝ち取るより確実な「生前の対策」までを解説します。
なぜハードルが高いのか――「特別の寄与」の意味
- 法律上、夫婦や親子にはもともと扶養義務・協力義務があります。そのため同居して食事や通院の世話をした、という通常の範囲の貢献は「義務の履行」とされ、寄与分にはなりません
- 認められるには、おおむね①無償性(対価をもらっていない)②継続性(相当期間)③専従性(片手間でない)④被相続人の財産の維持・増加との因果関係が必要です
- たとえば「介護のために仕事を辞め、要介護度の高い親を数年間在宅で介護し、本来かかったはずのヘルパー・施設費用の支出を免れさせた」――ここまで具体的に言えて初めて土俵に乗ります
認められる3つの類型と計算方法
- ①療養看護型(介護):計算のめやすは介護報酬基準の日当額 × 介護日数 × 裁量割合(0.5〜0.8程度)。プロではない家族の介護として割り引かれるのが通例です。要介護2以上が一つの目安とされます
- ②家業従事型:家業(農業・自営業)に無償または著しく低い給料で従事し、財産の維持・増加に貢献した場合。本来もらえたはずの給与額をベースに算定します
- ③金銭等出資型:親の借金の肩代わり、施設入居金や自宅リフォーム費用の負担など。支出額が比較的立証しやすく、3類型の中では最も認められやすい類型です
寄与分が認められた場合の計算:遺産から寄与分を先に引き、残りを法定相続分で分け、寄与者に寄与分を上乗せします。例:遺産4,000万円・兄弟2人・弟に寄与分400万円→(4,000−400)÷2=1,800万円ずつ+弟に400万円で、弟2,200万円・兄1,800万円。
相続人でない「嫁」の貢献――特別寄与料
- 長男の妻が義父母を介護しても、妻は相続人でないため寄与分は主張できません。この不公平を正すため、2019年施行の改正で「特別寄与料」が創設されました
- 相続人でない親族(6親等内の血族・3親等内の姻族)が無償で療養看護等の労務を提供し財産の維持・増加に特別の寄与をした場合、相続人に対して金銭を請求できます
- 期限が極端に短いことに注意:相続の開始と相続人を知った時から6か月以内、かつ相続開始から1年以内に協議または家庭裁判所への申立てが必要です。過ぎると請求権は消滅します
- 特別寄与料を受け取った場合、税務上は遺贈により取得したものとみなされ相続税の対象(2割加算あり)になる点も押さえておきましょう
寄与分にも「10年ルール」がある
特別受益と同じく、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、原則として寄与分の主張ができません(民法904条の3・2023年4月施行)。介護の貢献を主張したい方ほど、遺産分割を先延ばしにしないことが重要です。
本命は生前対策――争わずに報われる4つの方法
寄与分は「認められにくい・金額が小さくなりがち・兄弟関係が壊れる」の三重苦です。介護の貢献に確実に報いる方法は、親が元気なうちの設計に尽きます。
- ①遺言書:「介護を担ってくれた二女に自宅を相続させる」等、貢献を取り分に反映した遺言。付言事項で理由を書くと兄弟の納得感が段違いです。遺留分への配慮は忘れずに
- ②生前贈与・死因贈与:介護と引き換えの負担付贈与や、都度の贈与契約書で「対価」を形にする
- ③家族信託の受託者報酬:財産管理を担う子に月額の報酬を契約で定める。介護と管理の労力に、親の生前から継続的に報いる仕組みです
- ④介護費用の記録:立て替えた支出は領収書と一覧を残す。金銭出資型の寄与分・立替金の清算のどちらでも、記録がすべてです
介護の貢献を、無料で形にする
介護の貢献を確実に反映するなら、遺言書ツールと家族信託契約書ツール(受託者報酬条項に対応・無料)での生前設計が本命です。
よくある質問(FAQ)
同居して毎日食事を作り、通院に付き添っていました。寄与分になりますか?
厳しいのが実情です。同居家族による食事の世話や通院付き添いは、扶養・協力義務の範囲と評価されることが多く、それ単体で寄与分が認められる例は多くありません。要介護度が高い状態での本格的な介護を、仕事を制限してまで長期間無償で担い、施設・ヘルパー費用の支出を免れさせた――という水準に近いほど認められやすくなります。
寄与分はいくらくらい認められるものですか?
療養看護型では、介護報酬基準をベースに裁量割合で減額されるため、「介護した年数の実感」よりかなり小さい金額になるのが通例です。この「実感との落差」こそ、生前対策を本命とすべき最大の理由です。
他の兄弟が寄与分を認めてくれません。どう進めればよいですか?
遺産分割協議で合意できなければ、家庭裁判所の遺産分割調停の中で寄与分を主張します(寄与分を定める処分調停・審判)。介護日誌・要介護認定の資料・収支の記録など客観的な証拠を揃えることが前提です。感情の対立が激しい場合は、弁護士を入れて「金額の交渉」に土俵を移すほうが結果的に早く安く収まることが少なくありません。
まとめ
- 寄与分=特別の寄与への上乗せ。ただし通常の同居介護は「義務の範囲」とされ認められにくい
- 認められやすさは金銭出資型>家業従事型>療養看護型。計算は介護報酬基準×裁量割合
- 嫁の貢献は特別寄与料で請求可能。ただし期限は知ってから6か月・開始から1年
- 相続開始から10年で主張権消滅。そして本命は遺言・信託報酬など生前の設計
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。