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家族信託

受託者をやめたい・交代させたい|辞任と解任の要件と手続き

公開日 2026年8月25日 ・ 更新日 2026年8月25日 ・ 8分で読めます

家族信託は10年、20年と続く契約です。その途中で、こういう場面が訪れます——受託者が病気になった、転勤や介護で手が回らなくなった、あるいは他の家族が管理に不信を抱き始めた

ここで知っておくべきことがひとつ。受託者は、自分の都合だけで自由に辞められるわけではありません。同じく、家族が気に入らないからと一存で交代させることもできません。この記事では辞めたい側の道筋と、交代させたい側の道筋を整理します。受託者の死亡による交代は「受託者が先に亡くなったら」へ。

この記事の要点

①辞任は原則として委託者と受益者の同意が必要。やむを得ない事由があるときは裁判所の許可による道もある ②解任は委託者と受益者の合意でできるほか、重要な事由があれば裁判所へ申し立てる道がある ③どちらも後任とセットで進めないと信託が止まる ④交代時は就任承諾・口座と登記の名義変更・帳簿の引き継ぎが必要

辞任と解任の違い

辞任解任
誰が動くか受託者本人委託者・受益者、または裁判所
原則の要件委託者と受益者の同意委託者と受益者の合意
合意できないときやむを得ない事由があれば裁判所の許可を得る道がある任務違反など重要な事由があれば裁判所へ申立ての道がある
契約書の定め辞任・解任の要件が定められていれば、その内容にも従う
共通の注意後任がいなければ信託が止まる。単独では完結しない
信託法の規定に基づく一般的な整理です。実際の可否や手順は契約書の定めと個別の事情によるため、必ず専門家にご確認ください。

共通するのは、受託者の交代は「やめる」だけでは終わらないということ。財産を預かる立場を放り出すことはできず、必ず引き継ぎ先とセットで進めます。

受託者をやめたいとき

まず考えてほしいのが、本当に辞めるしかないのかです。理由が「負担の重さ」なら、続けるための調整で解決することが少なくありません。

  • 事務を軽くする——帳簿を表計算ソフトで型化する(信託帳簿はエクセルでOK)、支払いを自動化する
  • 報酬の条項を設ける——無報酬が負担感の原因なら、契約変更で報酬を定める道があります(受託者の報酬
  • 専門家に補助を頼む——確定申告や計算書の提出だけ税理士に任せる(信託不動産の確定申告
  • 信託監督人を置く——他の家族からの疑いが負担なら、第三者の目を入れると楽になります(信託監督人とは

それでも難しい場合の道筋は、①契約書の辞任条項を確認②後任の候補を決める③委託者と受益者の同意を得る④交代の手続き。同意が得られない、あるいは委託者の判断能力が低下しているといった事情があるときは、裁判所の許可による辞任という道もあります。いずれにせよ黙って管理をやめるのが最悪の対応です。支払いが止まり、受益者である親の生活に直撃します。

受託者を交代させたいとき

他の家族から見て「管理が怪しい」と感じたとき、いきなり解任に進むのは得策ではありません。順番があります。

  1. 報告を求める——受託者には帳簿を作り、受益者に報告する義務があります。まずは資料を出してもらう(受託者の5つの義務
  2. 事実を確認する——不明な支出があるのか、単に報告が滞っているだけなのか。後者なら運用の改善で足ります
  3. 第三者を入れる——信託監督人や受益者代理人の設置を検討。これだけで透明性は大きく上がります
  4. 解任を検討する——委託者と受益者の合意で解任できるほか、任務違反など重要な事由があれば裁判所へ申し立てる道があります
注意すべき現実

解任の合意には委託者の関与が想定されますが、その委託者である親の判断能力が低下していると、合意による解任が難しくなることがあります。信託を組むときに、受託者を監督する仕組みと交代のルールを契約に書いておくことが、この事態への唯一の予防策です(家族信託の失敗事例)。

交代の手続きと引き継ぎ

後任が決まったら、実務は4つです。①新受託者の就任承諾②信託口口座の名義変更③信託不動産の登記名義の変更④帳簿と財産の引き継ぎ。金融機関ごとに必要書類が異なり、登記には司法書士が関わるため、日程には余裕を見てください。

いちばん大切なのが④の引き継ぎを書面に残すことです。前受託者の在任期間の収支を明確にして引き渡さないと、「あの期間のお金はどうなったのか」という疑いが後々まで残ります。辞める側にとっても、これは自分を守る記録です。信託財産の残高、未精算の立て替え、進行中の契約——一覧にして双方が確認し、署名を残してください。

なお、後任がどうしても見つからない場合は、信託を終了させて任意後見や法定後見へ切り替える判断も現実的です(変更・解約のルール4制度の比較)。終了時には税務の論点も生じるため、専門家と進めてください。

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よくある質問(FAQ)

受託者の仕事が負担です。自分の意思だけで辞められますか?

原則として辞められません。信託法では、受託者は委託者と受益者の同意を得て辞任するのが原則とされ、やむを得ない事由があるときは裁判所の許可を得て辞任する道も定められています。契約書に定めがあればその要件にも従います。大切なのは、辞任しても後任がいなければ信託が止まるという点です。負担が理由なら、事務を軽くする、報酬の条項を設ける、専門家に補助してもらうなど、続けるための調整を先に検討してください

受託者の管理に不信があります。家族から辞めさせられますか?

解任の制度はあります。信託法では、委託者と受益者が合意すればいつでも解任できるとされ、任務違反など重要な事由があるときは裁判所へ申し立てる道も定められています。ただし委託者である親の判断能力が低下していると、合意による解任が難しくなる場合があります。実務では、いきなり解任に進むより、まず帳簿と報告を求めて事実を確認するのが順序です。説明を拒む、私的な支出の形跡があるといった段階に至れば、専門家に相談してください。

後任の受託者がいません。信託は終わってしまいますか?

すぐに終わるわけではありませんが、放置は危険です。信託法には、受託者が欠けた状態が一定期間続くと信託が終了する趣旨の定めがあります。まず契約書に後継受託者の定めがないかを確認し、なければ委託者と受益者の合意で新たな受託者を選任するか、必要に応じて裁判所へ申し立てます。後任が見つからない場合は、信託を終了させて任意後見や法定後見へ切り替える判断も現実的です。

交代が決まったら、どんな手続きが必要ですか?

主に4つです。新受託者の就任承諾、信託口口座の名義変更、信託不動産の登記名義の変更、前受託者からの帳簿と財産の引き継ぎ。金融機関ごとに必要書類が異なり、登記には司法書士が関わるため、日程には余裕を持ってください。とくに重要なのが引き継ぎの記録で、前受託者の在任期間の収支を明確にしておかないと、後日その期間の管理をめぐって疑いが残ります。書面で残してください。

まとめ

受託者は自分の都合だけでは辞められず、家族の一存でも交代させられません。辞任は原則として委託者と受益者の同意、解任は両者の合意によるのが基本で、事情によっては裁判所を通す道もあります。そして共通するのが、後任とセットでなければ信託が止まるということ。辞めたい理由が負担なら、事務の軽量化や報酬条項、監督人の設置で続けられる場合もあります。交代が決まったら、口座と登記の名義変更、そして在任期間の収支を書面で引き継ぐところまでが手続きです。

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な情報提供であり、法律・税務の個別助言を行うものではありません。辞任・解任の可否や手続きは契約書の定めと個別の事情により異なり、金融機関ごとに必要書類も異なります。実際の対応は契約書を確認のうえ専門家にご相談ください。(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)