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受託者が先に亡くなったら家族信託はどうなる?後継受託者の決め方
家族信託は、親が90代まで受益者であり続けることも珍しくない長い契約です。10年、20年と続くうちに——財産を管理する側の子が、先に倒れる。想定しにくい話ですが、実際に起きます。
そのとき何が起きるか。答えは明快で、受託者の任務は終了し、その地位は相続されません。引き継ぐのは契約で定めた後継受託者だけ。定めがなければ、財産の管理が止まる空白が生まれます。この記事では、何が起き、何を契約に入れ、誰を選び、実際にどう手続きするかを整理します。受託者の役割そのものは「家族信託の受託者とは?」へ。
①受託者の地位は相続されない。子が自動で引き継ぐことも、信託財産が受託者の遺産になることもない ②引き継げるのは契約書に定めた後継受託者だけ。定めがないと合意や裁判所の選任が必要になり、その間は支払いや管理が止まりかねない ③選ぶ基準は年齢・距離・事務能力・信頼の4点。連名ではなく順位をつけて指定する
受託者が亡くなると何が起きるか
まず押さえるべき原則が2つあります。
原則①受託者の任務は死亡により終了する。地位は相続されず、受託者の子が自動的に管理を引き継ぐことはありません。
原則②信託財産は受託者の遺産にならない。登記や口座の名義が受託者になっていても、それは受益者のために預かっている財産であり、受託者個人の相続財産とは切り離して扱われます。受託者の相続人が「親の名義だったのだから自分たちのもの」と主張しても通りません。
この2つを家族が知らないと、受託者の相続人と受益者側で深刻な行き違いが起きます。「名義は父だった」「いや信託財産だ」という争いは、受託者の相続人が信託の存在すら知らされていなかった場合にとくに起こりがちです。契約時に、受託者の家族にも信託の存在と契約書の保管場所を伝えておいてください。
後継受託者の定めがある場合/ない場合
| 定めがある場合 | 定めがない場合 | |
|---|---|---|
| 引き継ぐ人 | 契約書で指定された後継受託者 | 委託者と受益者の合意で選任。まとまらなければ裁判所に選任を求める |
| かかる時間 | 就任承諾と名義変更の手続きのみ | 合意形成や申立てに時間を要する |
| 空白期間 | 短い | 長引きやすく、支払いや管理が滞る |
| 最悪の結末 | — | 受託者が欠けた状態が一定期間続くと信託が終了しうる |
空白期間の怖さは、生活に直結する点にあります。信託口口座からの介護費用の支払い、賃貸物件の家賃管理や修繕対応が止まる——受益者である親の暮らしが、そのまま影響を受けます。
誰を後継受託者に選ぶか——4つの基準
- 年齢——受託者と同世代を指定すると、同時期に担えなくなる可能性があります。一世代下も視野に
- 距離——不動産の所在地や金融機関に通える範囲にいるか。海外在住だと実務が滞ります(子が海外在住のケースは別途の設計が要ります)
- 事務能力——帳簿の作成や年1回の報告が現実に続けられるか。作業量は「受託者とは?」の年間スケジュールで確認を
- 他の家族からの信頼——ここが弱いと、交代のたびに不信が噴き出します
指定の仕方にもコツがあります。兄弟を連名にする共同受託は意思決定が滞りやすいため避け、第1順位・第2順位と順番をつけて一人ずつ指定するのが定石です(理由は「受託者は兄弟でどう決める?」)。あわせて、指定する本人に事前の内諾を得ておくこと。契約書に名前だけあって本人が知らない、という状態では機能しません。
実際の手続きと、契約済みの人の見直し
後継受託者が就任するときの流れは——①就任を承諾する②信託口口座の名義変更(金融機関ごとに必要書類が異なります)③信託不動産の登記名義の変更④前受託者の相続人からの財産の引き渡しと帳簿の引き継ぎ⑤受益者・関係者への通知。登記や口座の手続きが伴うため、契約を作成した専門家に早い段階で連絡するのが確実です。
そして、すでに契約済みの方へ。契約書を出して、後継受託者の条項があるか確認してください。なければ変更手続きで追加できる可能性がありますが、委託者本人の判断能力が低下していると、その変更自体ができなくなることがあります(変更・解約のルール)。見直しもまた、元気なうちにしかできない作業です。
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受託者変更契約書をつくるよくある質問(FAQ)
受託者が亡くなったら、その子が自動的に引き継ぐのですか?
いいえ。受託者の地位は相続の対象ではなく、家族信託の受託者が亡くなった時点でその任務は終了します。子が信託財産を相続することもありません。信託財産は受託者の名義になっていても実質的には受益者のための財産で、受託者個人の遺産とは切り離して扱われるためです。引き継ぐ人は契約で定めた後継受託者であり、定めがなければ改めて決める手続きが必要になります。ここは誤解が非常に多い点なので、家族全員で共有しておいてください。
後継受託者を決めていなかった場合、信託はどうなりますか?
すぐに終わるわけではありませんが、空白が生まれます。信託法には、受託者が欠けた状態が一定期間続くと信託が終了するという趣旨の定めがあり、その前に委託者と受益者の合意で新たな受託者を選任するか、必要に応じて裁判所に選任を求めることになります。問題はその間で、信託口口座からの支払いや不動産の管理が滞りかねません。介護費用の支払いが止まれば実生活に直結します。空白を防げるのは、契約書にあらかじめ定めておくことだけです。
後継受託者は誰を選べばいいですか?兄弟の一人でも大丈夫ですか?
構いませんが、選ぶ基準は「順番」ではなく「実務を担えるか」です。年齢が受託者と近すぎないこと、財産の所在地に通える距離にいること、事務作業に耐えられること、他の家族から信頼されていること。この4点で見ます。海外在住や高齢の方を形式的に指定すると、いざというときに機能しません。また、複数の兄弟を連名で指定する共同受託は意思決定が滞りやすいため、順位をつけて一人ずつ指定するのが実務の定石です。
すでに契約済みですが、後継受託者の定めがありません。追加できますか?
できる可能性が高いです。多くの契約書は、委託者と受益者の合意などによる変更の手続きを定めており、それに従って後継受託者の条項を追加する形になります。ただし委託者本人の判断能力が低下していると、変更の当事者になれず手続きが難しくなる場合があります。つまりこれも、元気なうちにしかできない見直しです。契約書を確認して定めがなければ、作成を依頼した専門家に早めに相談してください。あわせて信託口口座の金融機関にも手続きを確認しておくと安全です。
まとめ
受託者が先に亡くなったら——任務は終了し、地位は相続されず、信託財産も受託者の遺産にはなりません。引き継げるのは契約書に定めた後継受託者だけで、定めがなければ合意や裁判所の選任を待つ空白が生まれ、その間は介護費用の支払いや不動産の管理が止まりかねません。選ぶ基準は年齢・距離・事務能力・信頼の4点、指定は連名ではなく順位で。そして契約済みの方は、今日その条項があるか確認を。追加できるのは、委託者が元気なうちだけです。
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。