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受益者連続型信託とは?「妻の次は長男へ」を実現する仕組みと30年ルール

公開日 2026年8月23日 ・ 更新日 2026年8月23日 ・ 8分で読めます

受益者連続型信託(後継ぎ遺贈型受益者連続信託)とは、「まず自分、自分の死後は妻、妻の死後は長男」のように、財産から利益を受ける人(受益者)を連続して指定できる家族信託の設計です。

ポイントは、遺言では自分の財産の行き先を「1代先」までしか決められないのに対し、信託なら2代先・3代先の承継まで契約で決めておけること。再婚家庭や子のない夫婦、先祖代々の不動産や自社株を守りたい家庭で「遺言の限界」を超える切り札として使われます。家族信託そのものが初めての方は、先に「家族信託とは?最初に読む完全ガイド」をどうぞ。

この記事の要点

①受益者連続型信託=受益者の死亡で受益権が次の指定者へ順に移る設計。遺言ではできない2代先指定が可能 ②信託開始から30年経過後の承継は1回限り(30年ルール)。実質2〜3代が上限 ③承継のたびに相続税がかかり、遺留分も消せない。「節税策」ではなく「承継先コントロールの道具」と理解する

仕組み――受益権のバトンが指定順に渡る

第1受益者 父(委託者) 生前は自分のため 父の死亡 第2受益者 生活費・自宅に住む権利 妻の死亡 第3受益者 長男(先妻の子など) 最終的な承継者 受益権の移り先は、最初の信託契約ですべて指定済み 途中の受益者(妻)が行き先を変えることはできない 財産の管理は受託者(例:長男)が一貫して担当
図:受益権のバトンリレー。誰に・どの順で渡すかを、最初の契約で固定できるのが最大の特長です。

通常の家族信託では、受益者(多くは親自身)が亡くなると信託は終了し、残った財産は契約で定めた帰属権利者へ渡ります。受益者連続型では、受益者の死亡を終了事由とせず、受益権が次の指定者へ順番に移っていくよう設計します。財産の名義と管理は受託者が一貫して持ち続けるため、承継のたびに管理が途切れないのも利点です(受託者の役割は「受託者とは」参照)。

遺言との違い――「後継ぎ遺贈」は遺言では無効

「全財産を妻に相続させる。妻の死後は長男に相続させる」――こう遺言に書きたくなりますが、後段の指定(後継ぎ遺贈)は無効と解するのが通説です。遺言で決められるのは自分の財産の行き先までで、妻に渡った瞬間にそれは妻の財産となり、次の行き先は妻(の遺言や相続)が決めることになるからです。

受益者連続型信託は、財産の所有権を受託者に移し、「利益を受ける権利(受益権)」の承継順を契約で定める構造をとることで、この壁を法的に乗り越えます。遺言と信託の使い分け・優先関係の全体像は「家族信託と遺言はどっちが必要?」で整理しています。

30年ルール――どこまで先を指定できるか

無限に承継を続けられるわけではありません。信託法91条により、信託開始から30年を経過した後は、受益権の新たな承継は「1回限り」とされています。30年経過後に受益者となった人が死亡すると、その次への承継はできず、信託は終了します。

  1. 信託開始(父70歳)。第1受益者=父。ここから30年のカウントが始まります
  2. 開始から10年後、父死亡。受益権は妻へ(30年以内の承継は回数制限なし)
  3. 開始から32年後、妻死亡。30年経過後なので、長男への承継が「最後の1回」になります
  4. 長男の死亡で信託は終了。残余財産は契約で定めた帰属権利者へ渡ります

実務上は2〜3代先までの設計が現実的な上限と考えておけば十分です。なお、信託終了時の税金・登記については「家族信託が終了したときの税金」をご覧ください。

活用例と、税務・遺留分の注意点

  • 再婚家庭:「後妻の生活は守りたい。ただし後妻の死後、財産は後妻側の親族ではなく先妻の子へ戻したい」――受益者連続型の最も典型的な出番です(再婚と前妻の子の相続
  • 子のない夫婦:「妻亡き後は、妻の兄弟ではなく自分の甥へ」という設計が可能になります(子のない夫婦の相続と遺言
  • 自社株・先祖代々の不動産:経営権や家産が配偶者側の親族へ流出するのを防ぎ、決めた血筋・後継者に承継させます(自社株の家族信託
  • 障がいのある子の生活保障:「自分→障がいのある長女→長女亡き後は支援してくれた次女へ」という親なき後対策にも使えます(親なき後の信託
節税の道具ではありません――承継のたびに相続税がかかります

受益者が交代するたび、次の受益者は受益権を遺贈で取得したものとみなされ、相続税の課税対象になります(父→妻の承継で1回、妻→長男の承継でもう1回)。また、信託を使っても相続人の遺留分は消せず、受益権の承継に対して遺留分侵害額請求がなされ得ます(遺留分とは)。受益者連続型は「承継先を固定する道具」であり、税負担と遺留分への配慮は別途設計が必要です。

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よくある質問(FAQ)

遺言で「妻に相続させ、妻の死後は長男に」と書けば同じことができませんか?

できません。2代先を指定する「後継ぎ遺贈」は無効と解するのが通説です。妻に渡った財産の行き先は妻が決めることになるため、2代先まで固定したければ受益者連続型信託が現実的な手段です。

受益者連続型信託の「30年ルール」とは何ですか?

信託開始から30年経過後は、受益権の承継が1回しか認められないルールです(信託法91条)。30年経過後に受益者となった人の死亡で信託は終了します。実質2〜3代先までが設計の上限です。

受益者が交代するたびに税金はかかりますか?

かかります。次の受益者は遺贈により受益権を取得したものとみなされ、相続税の課税対象になります。節税策ではなく承継先コントロールの仕組みです。信託と税金の全体像は「家族信託と贈与税」「終了時の税金」をどうぞ。

受益者連続型信託にすれば、遺留分は無視できますか?

できません。信託を使っても遺留分は消せず、受益権の承継に遺留分侵害額請求がなされる可能性があります。遺留分権利者に配慮した受益権の割り付けや代償資金の準備をあわせて検討してください(遺留分侵害額請求とは)。

まとめ

  • 受益者連続型信託=受益権のバトンを契約で指定した順に渡す設計。遺言ではできない2代先指定が可能
  • 30年ルールにより、信託開始30年経過後の承継は1回限り。実質2〜3代が上限
  • 再婚家庭・子のない夫婦・自社株承継・親なき後対策が典型的な活用場面
  • 承継ごとに相続税がかかり、遺留分も消せない。節税ではなく「承継先の固定」が目的の制度

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な情報提供であり、法務・税務のアドバイスではありません(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)。受益者連続型信託の設計・課税関係は個別事情により大きく変わります。実行前に必ず司法書士・弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。