委託者・受益者とは?家族信託の登場人物の権利・死亡時の扱いをわかりやすく
家族信託には3人の登場人物がいます。財産を託す「委託者」、託されて管理する「受託者」、そして財産から利益を受ける「受益者」です。このうち受託者については「受託者とは?なれる人・5つの義務・報酬」で詳しく解説しているので、この記事では残る2人――委託者と受益者に焦点を当てます。
この2つの立場を理解する鍵はひとつ。家族信託の税金と権利は、名義人(受託者)ではなく「受益者が誰か」で決まるということです。ここが腑に落ちると、「なぜ委託者=受益者にするのか」「受益者が死んだらどうなるのか」が一気にクリアになります。
①委託者=財産を託す人(典型は親)。受益者=利益を受ける人。委託者=受益者の「自益信託」なら開始時に贈与税がかからない ②委託者が認知症になっても信託は続く。それこそが家族信託の存在意義 ③受益者の死亡時の扱い(終了か、次の受益者へ続くか)は契約の定めしだい。ここが契約書の設計の心臓部
委託者とは――財産を託し、信託の目的を決める人
委託者は、自分の財産を信託し、その使いみち(信託の目的)を決める人です。典型は財産を持つ親。信託契約の一方の当事者として、次のような立場・権利を持ちます。
- 信託の設計者――誰を受託者・受益者にするか、財産を何のために使うか、いつ終了するかを契約で決めます(どの財産を託せるかは「信託財産にできるもの」参照)
- 契約の変更・受託者の交代への関与――契約の定めに応じて、信託の変更や受託者の解任・選任に関わります(家族信託の変更・解約)
- 契約できるのは判断能力があるうちだけ――認知症が進んでからでは信託契約そのものが結べません(対策はいつから始める?)
なお、契約後の委託者の地位は意外と「軽く」なります。財産の管理・処分の権限は受託者に移り、日々の運用に委託者の出番はありません。委託者の地位は原則として相続で承継されますが、契約で「委託者の死亡により地位は消滅する(または受益者に帰属する)」と定めるのが実務では一般的です。
受益者とは――利益の持ち主。税金はこの人を基準に決まる
受益者は、信託財産から生じる利益(生活費の給付、家賃収入、自宅に住む利益など)を受け取る人です。信託法上、実質的な財産の持ち主として扱われる最重要人物で、次の権利を持ちます。
- 給付を受ける権利(受益権)――契約に従い、金銭の給付や信託不動産に住む利益を受けます
- 受託者を監督する権利――帳簿の閲覧請求、報告請求など。受託者の暴走を止める最後の砦です(受託者側の帳簿義務は「信託帳簿のつけ方」参照)
- 税金の基準になる――所得税(信託不動産の家賃は受益者の所得)、贈与税・相続税(受益権の移動に課税)は、すべて受益者を基準に判定されます
受益者には判断能力や年齢の制限がなく、認知症の親や障がいのある子、幼い孫でも受益者になれます。ただし自分で受託者を監督できない受益者には、代わりに権利を行使する受益者代理人や、監督役の信託監督人を契約で置くのが安全です(信託監督人・受益者代理人とは)。
なぜ「委託者=受益者」が基本形なのか
家族信託の実務では、委託者と受益者を同一人物(親)にする「自益信託」が圧倒的多数です。理由は税金にあります。
| 自益信託(委託者=受益者) | 他益信託(委託者≠受益者) | |
|---|---|---|
| 例 | 父が託し、利益も父が受ける | 父が託し、利益は長男が受ける |
| 開始時の課税 | 贈与税なし(利益の持ち主が変わらない) | 受益者に贈与税(利益が父→長男へ移る) |
| 主な用途 | 認知症対策・財産管理の標準形 | 生前贈与の代替など特殊な設計 |
「子の名義になるのだから贈与では?」という心配は不要で、受託者はあくまで管理者。税務上の持ち主は受益者のままです。課税パターンの詳細は「家族信託に贈与税はかからない?」で解説しています。
認知症になったとき・亡くなったときの扱い
- 委託者(=受益者)が認知症になったら:信託はそのまま続きます。管理権限はすでに受託者にあるため財産は凍結されません。これこそが家族信託の存在意義です。ただし契約の変更や追加信託は原則できなくなるため、設計は元気なうちに固めておく必要があります
- 受益者が死亡したら:契約の定めによって2通りに分かれます。①信託を終了させ、残余財産を指定した人(帰属権利者)に渡す――遺言と同じ承継機能を果たします(終了時の税金)。②第二受益者(妻など)へ受益権を引き継いで信託を続ける――いわゆる受益者連続型です(受益者連続型信託とは)
- 受益権の移動には課税:死亡による移動なら次の受益者に相続税、生前の変更なら贈与税がかかります。「受益者が誰か」の変更=課税イベントと覚えてください
受益者の死亡で終わるのか、続くのか。残った財産は誰のものになるのか。ここを曖昧に書いた契約書は、相続発生時に家族間トラブルと想定外の課税を同時に招きます。ひな形を使う場合も、この条項だけは自分の家族構成に合わせて必ず作り込んでください(契約書のひな形と書き方)。
登場人物を決めたら、契約書のたたき台へ
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よくある質問(FAQ)
委託者が認知症になったら、家族信託はどうなりますか?
信託は影響を受けず、そのまま続きます。管理権限はすでに受託者へ移っているため財産は凍結されません。ただし信託していない財産は通常どおり凍結対象で、契約変更・追加信託も原則できなくなります。
委託者が死亡したら、信託は終了しますか?
契約の定めによります。終了させて帰属権利者へ渡す設計なら遺言の代わりになり、第二受益者へ引き継ぐ設計なら信託は続きます(受益者連続型信託)。終了事由と帰属先は契約書の要です。
受益者を父から子に変更すると、税金はかかりますか?
かかります。対価なく受益権が移れば新受益者に贈与税(死亡による移動なら相続税)が課されます。家族信託の税金は「受益者が誰か」で決まるのが大原則です(詳しくはこちら)。
認知症の父や障がいのある子を受益者にできますか?
できます。受益者に判断能力・年齢の制限はありません。ただし自分で受託者を監督できない場合に備え、受益者代理人や信託監督人を契約で定めておくのが安全です(親なき後の信託も参考に)。
まとめ
- 委託者=財産を託して信託を設計する人。契約できるのは判断能力があるうちだけ
- 受益者=利益の持ち主。監督権を持ち、所得税・贈与税・相続税はすべてこの人を基準に決まる
- 委託者=受益者の自益信託なら開始時に贈与税なし。これが基本形である理由
- 受益者死亡時の扱い(終了か連続か)と残余財産の帰属先が、契約書設計の心臓部
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。