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信託した不動産を修繕・売却する手続き|受託者ができること

公開日 2026年8月30日 ・ 更新日 2026年8月30日 ・ 9分で読めます

家族信託を組んで数年。実家の屋根の傷みが目立ってきた。空き家のままなら売ったほうがいいかもしれない——受託者になったあなたは、どこまで自分の判断で動けるのでしょうか

答えを先に言うと、できる範囲は法律の一般論ではなく、あなたの信託契約書の「権限」の条項で決まります。この記事では、契約書の確認から修繕・売却の実行、代金の管理までを流れで解説します。年間の実務全体は「家族信託の1年の実務カレンダー」を、疑念を持たれない記録の残し方は「受託者が「使い込み」を疑われないために」をあわせてどうぞ。

この記事の要点

①受託者が単独で修繕・売却できるかは、信託契約書の権限の定めで決まる。まず契約書の確認から ②現状維持のための修繕は当然できる。大規模修繕は契約の定めと資金の出どころを確認して実行 ③売却権限があれば、受託者が売主として単独で売買契約・登記手続きまで進められる。買主側への説明資料として信託契約書の提示を求められることが多い ④代金は必ず信託口口座へ。帳簿と報告書に記録し、税金は受益者に課される点に注意

まず契約書——答えはすべてそこに書いてある

信託した不動産の管理・処分の権限は、信託契約書の条項で決まっています。確認するのは次の3点です。

  • 売却(処分)の権限があるか——「信託不動産を売却することができる」という趣旨の条項の有無。この一文がなければ、受託者は原則として売れません
  • 条件が付いていないか——「受益者の同意を得て」「信託監督人の同意を得て」などの条件付きの設計もあります
  • 修繕・賃貸などの管理権限の範囲——大規模修繕や建て替えまで想定した書き方になっているか

権限がない・足りない場合は、関係者の合意による信託契約の変更という道があります(「家族信託は後から変更・解約できる?」)。委託者の判断能力が失われた後は変更のハードルが上がるため、権限の不足に気づいたら早めに動いてください。

修繕の実務——保存行為と大規模修繕の違い

修繕の種類受託者の動き方のめやす
雨漏り補修・給湯器交換など現状維持財産を守る行為として受託者の判断で実行できるのが原則。見積書・領収書を保存し帳簿に記録
外壁全面・屋根の葺き替えなど大規模修繕契約の権限と資金を確認して実行。金額が大きいため、受益者・家族への事前説明と記録を残すのが安全
建て替え・大規模リフォーム契約に明記がなければ単独では動かない。契約変更や専門家への相談を先に
めやすの整理(2026年8月時点)。個別の可否は契約内容によります。

費用は信託財産(信託口口座)から支出するのが大原則です。受託者が立て替えた場合も、精算の記録を必ず残します。賃貸物件の修繕判断は「賃貸アパートの家族信託」も参考になります。

売却の実務——受託者名義で売る流れ

  1. 権限の確認と関係者への説明——契約書の売却権限を確認し、単独で売れる場合でも、受益者や他の家族に売却の理由・想定価格を説明して記録に残します。後日の紛争予防に効きます
  2. 不動産会社への依頼——登記簿には信託の登記がされており、売主は受託者です。媒介契約の段階で信託契約書(権限のわかる部分)の提示を求められるのが通例です
  3. 売買契約と決済・登記——受託者が売主として契約書に署名します。決済時に信託登記の抹消と買主への所有権移転の登記を行います。段取りは司法書士が主導します
  4. 代金の受け入れ——売却代金は受託者個人の口座ではなく、必ず信託口口座へ。ここを誤ると使い込みを疑われる典型パターンになります(口座の考え方は「信託口口座とは」)

代金の管理・記録・税金——売った後が本番

売却後の代金は信託財産として、契約の目的(本人の介護費用・生活費など)に沿って管理を続けます。帳簿への記録と、受益者への報告はいつもどおりです(帳簿のつけ方は「信託帳簿はエクセルでOK」)。修繕・売却のような大きな動きがあった年は、信託事務報告書の形で書面にまとめておくと、家族への説明も税務の場面も格段に楽になります。

税金はつまずきやすい論点です。売却益(譲渡所得)に課税されるのは受託者ではなく受益者で、受益者の確定申告が必要になります。自宅を売った場合の特例の適用可否や、損益の扱いには信託特有の注意点があるため(「家族信託した不動産の確定申告」)、売却の年は税理士への相談を前提に段取りしてください。

修繕・売却の記録、書面に残せていますか——実行した内容・金額・理由を信託事務報告書にまとめておけば、家族への説明も後日の証明も1枚で済みます。無料・登録不要です。

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よくある質問(FAQ)

信託契約書に売却の権限が書いてあれば、受益者の同意がなくても売れますか?

法的には売れるのが原則です。売却権限が定められていれば、受託者は単独で売買契約を結べます。ただし「売れる」と「黙って売ってよい」は別問題です。本人(受益者)の生活に関わる大きな判断なので、売却の理由・価格・代金の使い道を家族に説明し、記録に残してから進めてください。説明と記録は法的義務というより、後日の紛争からあなた自身を守る装備です。

契約書に売却権限がありませんでした。もう売れないのでしょうか?

道はあります。委託者・受託者・受益者などの関係者が合意すれば、信託契約を変更して売却権限を追加できます。ただし委託者である親の判断能力が失われていると、変更のハードルは一気に上がります。売却の可能性が少しでもあるなら、親が元気なうちに契約を点検して変更しておくのが唯一の安全策です。変更の進め方は司法書士など信託に詳しい専門家に相談してください。

売却代金は誰のものになりますか?受託者がもらえるわけではないですよね?

そのとおりです。代金は信託財産になり、受託者は契約の目的に沿って管理する立場のままです。実質的な持ち主は受益者(通常は親本人)で、介護費用や生活費として受益者のために使います。だからこそ入金先は必ず信託口口座にし、受託者個人のお金と混ぜないこと。使い道は帳簿に記録し、大きな動きの年は報告書にまとめる——この管理が、受託者を疑いから守ります。

売却した年の税金はどうなりますか?

売却益(譲渡所得)への課税は、受託者ではなく受益者に対して行われます。受益者の確定申告が必要で、税額は所有期間や取得費によって変わります。自宅を売った場合の特例の適用可否など、信託を通した売却には個別の論点が多いため、売却を決めた段階で税理士に相談し、申告まで見据えた段取りを組んでください。確定申告の必要書類は関連記事でも解説しています。

まとめ

信託不動産の修繕・売却は、契約書の権限確認がすべての出発点です。現状維持の修繕は受託者の判断で、大規模な処分は権限と記録を確かめて。売却は受託者が売主として進められますが、代金は必ず信託口口座へ入れ、帳簿と報告書に残すこと。税金は受益者に課される点も忘れずに。そして権限が足りないと気づいたら、親が元気なうちの契約変更だけが安全な出口です。大きく動く年ほど、説明・記録・専門家の三点セットで進めてください。

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な情報提供であり、法律・税務・保険の個別助言を行うものではありません。商品の内容や制度の適用可否は個別の事情により異なります。実行にあたっては必ず専門家にご相談ください。(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)