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親の預金から介護費用を払うには?「使い込み」と言われない5つの方法

公開日 2026年8月24日 ・ 更新日 2026年8月24日 ・ 8分で読めます

介護費用は親のお金で払うのが大原則です(誰が負担すべきかの整理は「親の介護費用は誰が払う?」)。問題はその先——親の口座から、どうやって適法に・止まらずに・後で疑われずにお金を出すか。多くの家庭が選ぶ「キャッシュカードを預かる」運用は、実は二重の時限爆弾を抱えています。認知症が進むと銀行に止められ、相続のときに兄弟から「使い込み」を疑われるのです。

この記事では、正攻法5つ——①代理人カード ②銀行の代理支払いサービス ③家族信託 ④任意後見 ⑤成年後見——を、親の判断能力の段階別に比較します。口座が凍結される仕組みそのものは「認知症で親の口座が凍結される?」をどうぞ。

この記事の要点

①カードを預かる運用は、本人の依頼と記録があるうちは適法だが、認知症の進行で止まり、相続時の使い込み疑いの火種になる ②元気なうちに選べるのは代理人カード(手軽・少額向き)/銀行の認知症対応サービス/家族信託(本命・実家売却まで対応)/任意後見。判断能力を失った後は成年後見しかない ③どの方法でも「日付・金額・使い道・レシート」の記録が身を守る。兄弟への定期共有までやれば、揉める芽はほぼ消える

「カードを預かる」運用の2つの落とし穴

親に頼まれてカードで生活費や介護費用を下ろすこと自体は、本人の意思にもとづき本人のために使う限り適法です。ただし——

落とし穴①:認知症の進行で止まる——本人の意思確認ができなくなった時点で、銀行は口座取引を制限できます(口座凍結の仕組み)。ATMの限度額変更や定期の解約など「窓口が必要な手続き」から順に詰まり、施設入居の一時金など大きな支払いが必要になる頃に、ちょうど使えなくなるのが典型パターンです。

落とし穴②:相続で「使い込み」を疑われる——親の死後、通帳の履歴は相続人全員が確認できます。介護を担わなかった兄弟から見ると、説明のつかない引き出しは全部グレー。兄弟の相続トラブルの定番の火種であり、実際に返還を求める争いに発展することもあります。

5つの正攻法——段階別の比較表

方法使える段階特徴(詳細は各記事へ)
①代理人カード判断能力あり家族用のATMカードを追加発行。手軽だが本人の判断能力低下後の扱いは銀行次第(代理人カードの作り方
②銀行の認知症対応サービス判断能力あり(一部は低下後も)代理人指定・医療介護費の代理支払いなど銀行ごとの仕組み(銀行の認知症サービス比較
③家族信託判断能力あり(契約時)親の預金を信託口口座に移し、子が受託者として介護費用を支出。判断能力低下後も止まらず、実家の売却まで設計可能家族信託とは
④任意後見判断能力あり(契約時)低下後に発効し、施設契約などの身上監護も代理できる(任意後見の始め方
⑤成年後見(法定)判断能力を失った後の唯一の方法家庭裁判所が後見人を選任。確実だが監督・報酬が続き、柔軟性は低い(法定後見の3類型

見てのとおり、①〜④はすべて「親に判断能力があるうち」しか始められません。介護の始まりは、選択肢が毎月減っていく時期でもあります。

それぞれの向き・不向き

月々の生活費・介護サービス費レベルなら、①代理人カードや②銀行サービスで足ります。手軽さが最大の利点で、まず最初に検討すべき手です。ただし限度額や対象手続きに制約があり、定期預金の解約・まとまった一時金・実家の売却には届きません

施設入居の一時金、長期化する介護費用、実家の処分まで見据えるなら、③家族信託が本命です。信託口口座に移した資金は親の判断能力に関係なく受託者(子)が動かせ、信託した実家は施設費用が足りなくなったときに売却して充当できます。施設契約の代理などの身上監護まで必要なら、④任意後見との併用が定石です(信託と任意後見の併用)。すでに判断能力が失われている場合は⑤成年後見一択——できることは確保されますが、家庭裁判所の監督下で原則やめられず、専門職後見人が付けば報酬が続きます。

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今日からできる「疑われない」記録術

どの方法を選んでも(そして選ぶ前のカード運用の段階でも)、身を守るのは記録です。①日付と金額 ②使い道 ③レシート・領収書・請求書 ④残高の推移——この4点をノートか家計簿アプリに残し、できれば兄弟に月1回共有してください。「親のための支出」と跡づけられれば、使い込み疑いはほぼ封じられます。あわせて親の財産の全体像を財産目録にしておくと、介護資金の計画にも、その先の相続にもそのまま使えます。お金の話を家族で切り出すきっかけづくりは「親と終活の話を始めるきっかけ」も参考に。

よくある質問(FAQ)

親に頼まれてキャッシュカードで下ろすのも違法ですか?

親に判断能力があり、親の依頼にもとづいて親のために使うなら違法ではありません。問題は2つ先にあります。第一に、認知症が進んで本人の意思確認ができなくなると、銀行はカードでの引き出しも止め得ること。第二に、相続のとき他の兄弟から「何に使ったのか」と使い込みを疑われることです。頼まれて下ろす段階から、日付・金額・使い道・レシートの記録を残す習慣をつけてください。

もう認知症が進んでいます。今からできる方法はありますか?

契約による方法(家族信託・任意後見・代理人カード)は本人の判断能力があるうちしか使えないため、進行後の選択肢は実質、家庭裁判所に申し立てる成年後見制度になります。後見人が付けば親の口座から介護費用を支出できますが、裁判所の監督下に入り、原則やめられず、専門職後見人の報酬が続く点は理解しておいてください。医療費・施設費の請求書を親の口座からの振込・引き落としにできないか、銀行や施設に相談する余地もあります。

「使い込み」と疑われないために、何を記録すればいいですか?

①引き出しの日付と金額②使い道③レシート・領収書・請求書④残高の推移、の4点をノートか家計簿アプリで残し、できれば兄弟に定期共有してください。介護費用・医療費・生活費など親のための支出であることが跡づけられれば、相続時の疑いはほぼ防げます。逆に現金でまとめて下ろして記録がない状態が数年続くと、事実がどうあれ説明のしようがなくなります。

家族信託と成年後見、介護費用の支払いにはどちらが向いていますか?

元気なうちに備えるなら家族信託、すでに判断能力を失っているなら成年後見しか選べません。両方選べる段階で比べると、家族信託は家族が柔軟にお金を動かせて実家の売却にも対応できる一方、身上監護(施設契約の代理など)は含まれません。成年後見は身上監護を含みますが、裁判所の関与と継続コストがあります。介護費用の支払いが主目的なら家族信託、契約行為の代理まで必要なら任意後見との併用が定石です(家族信託と成年後見の違い)。

まとめ

介護費用は親のお金で——その正攻法は、元気なうちなら「代理人カード・銀行サービス(少額向き)」か「家族信託(大きなお金と実家まで)」、必要なら任意後見を併用。判断能力を失った後は成年後見のみです。カードを預かる運用は入口としては現実的でも、認知症の進行で止まり、相続で疑われる二段構えのリスクを抱えます。そして方法が何であれ、日付・金額・使い道・レシートの記録と兄弟への共有が最強の防具。選択肢は親の判断能力とともに減っていきます——比較表を家族会議のたたき台に、動けるうちに一手を。

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な制度解説です。銀行のサービス内容・取引制限の運用は金融機関ごとに異なり、後見・信託の適否は個別の事情によります。実行前に金融機関・司法書士・弁護士等へご確認ください。(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)