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相続発生後

農地を相続したときの手続き|農業委員会への10か月以内の届出と手放す選択肢

公開日 2026年8月23日 ・ 更新日 2026年8月23日 ・ 9分で読めます

実家の田んぼや畑を相続したとき、宅地の相続と決定的に違う点が2つあります。①相続登記とは別に「農業委員会への届出」が必要で、怠ると10万円以下の過料の対象になること。②農地は農地法の縛りで自由に売れず・使えず、出口の選択肢が限られることです。

この記事では、相続直後にやるべき2つの手続きと、「農業はしない」場合の現実的な選択肢を整理します。

まず全体像|農地相続の2つの手続きと3つの出口

農地を相続した 手続き① 相続登記(法務局) 3年以内・義務化(許可は不要) 手続き② 農業委員会へ届出 10か月以内・怠ると過料 自分で農業をする? する 営農を継続 納税猶予の特例も 検討(要件あり) しない 出口A 貸す 農地バンク・ 近隣農家へ 出口B 売る・転用 農地のまま=3条許可 宅地化=転用許可 出口C 手放す 国庫帰属制度・ 相続放棄 ※ どの出口でも、手続き①②は先に済ませておくのが原則です
図1:農地相続の全体図。手続き2つを済ませてから、3つの出口を選びます。

手続き①:相続登記(3年以内・義務)

意外に思われますが、相続による農地の取得に、農地法の許可は不要です(売買なら必要な「3条許可」が、相続では要りません)。したがって名義変更は宅地と同じく法務局での相続登記で行い、2024年からの義務化(3年以内・怠ると過料の対象)も宅地と同様に適用されます。手順と費用は「相続登記を自分でやる方法」「相続登記の義務化とは」をご覧ください。

手続き②:農業委員会への届出(10か月以内)

農地特有なのがこちらです。農地法3条の3により、相続で農地を取得した人は、その農地がある市町村の農業委員会へ届出をしなければなりません。

項目内容
期限相続を知った時からおおむね10か月以内
怠った場合10万円以下の過料の対象
届出先農地の所在地の市町村農業委員会(市役所・町村役場内が一般的)
主な記載・添付届出書(取得者・農地の所在等)+相続を証する書面(登記事項証明書や戸籍等。自治体により運用が異なるため事前確認を)
費用届出自体の手数料は無料が一般的
この届出は「許可」ではなく「報告」+「相談の入口」

届出は取得の可否を審査するものではなく、農業委員会が地域の農地を把握するためのものです。様式には「農地の管理や処分について農業委員会のあっせん等を希望するか」を書く欄が設けられているのが通例で、耕作できない場合の借り手探しの相談窓口としても機能します。農業をしない人こそ、正直に相談するのが得策です。

農業をしない場合の3つの出口(貸す・売る/転用・手放す)

出口A:貸す──最も現実的な第一候補

農地のまま近隣の農家や農業法人に貸す方法です。公的な仲介機関である農地バンク(農地中間管理機構)や農業委員会のあっせんを使えば、個人で借り手を探す負担を減らせます。賃料は多くを期待できない地域もありますが、農地が維持され、雑草・害虫の苦情や管理負担から解放されること自体に価値があります。

出口B:売る・転用する──許可のハードルを正しく知る

農地のまま売る場合、買主は原則として農業ができる者に限られ、農地法3条の許可が必要です。宅地などに転用して売る場合は転用許可(5条)が必要で、市街化調整区域や優良農地(農振農用地)では転用がそもそも認められないことが多くあります。逆に市街化区域内の農地なら、許可ではなく届出で転用でき、宅地として売却できる可能性が高まります。自分の農地がどの区域かを市町村で確認することが、出口選びの出発点です。

出口C:手放す──国庫帰属制度と相続放棄

買い手も借り手もいない場合、相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう道があります。農地も対象になり得ますが、審査手数料と負担金(原則20万円〜、農地は面積等で加算あり)がかかり、要件も厳格です(制度の詳細はこちら)。相続放棄はすべての遺産を手放す最終手段で、農地だけを選んで放棄することはできません(相続放棄の手続き)。

相続税の注意点|評価と「納税猶予」の落とし穴

① 評価は場所で桁が変わる──純農村部の農地は倍率方式で評価が低い一方、市街化区域内の農地は宅地並みに評価され、相続税に大きく響くことがあります。まず固定資産税の課税明細と路線価で概算を掴んでください(基礎控除の判定)。

② 納税猶予は「農業を続ける人」の制度──相続税の納税猶予(農地等の特例)を使うと税負担を大きく抑えられますが、原則として終身の営農継続が条件で、途中でやめると猶予税額+利子税の納付が発生します。「農業をするか迷っている」段階で安易に選ぶ特例ではありません。適用判断は必ず税理士へ。

放置するとどうなる?

登記も届出もせず耕作もしない農地は、雑草・病害虫・不法投棄の温床となって近隣の営農に実害を与え、農業委員会から利用意向調査・指導の対象になります。遊休農地と判定されると固定資産税の負担が実質的に重くなる措置もあります。さらに登記を放置すれば、代替わりのたびに相続人が増えて処分不能に近づくのは宅地と同じです(放置のリスクは空き家と共通)。「使わないなら、貸すか手放す手続きへ早く進む」が農地の鉄則です。

よくある質問

農業をしない私でも、農地を相続できますか?

できます。売買と違い、相続に農地法の許可は不要なので、農業経験や下限面積などの要件は問われません。取得後の届出だけ忘れないでください。

田んぼを兄弟の誰も欲しがりません。協議はどう決着させるべきですか?

「価値が低いから」と共有にするのは最悪手です。管理を引き受ける1人が取得し、他の財産で調整するか、売却・貸付け・国庫帰属まで含めた出口を決めてから協議書を作ってください(遺産分割協議書の書き方)。

家庭菜園にしたり、駐車場にしたりするのは自由ですか?

登記地目や現況が農地なら、自己利用でも宅地化・駐車場化は「転用」にあたり、許可(市街化区域では届出)が必要です。無断転用は原状回復命令や罰則の対象になり得ます。

山林や原野も同じ手続きですか?

山林・原野は農地法の対象外のため、農業委員会への届出は不要です(相続登記の義務は同じ)。なお森林は市町村への森林の土地所有者届出が必要な場合があります。

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な制度解説であり、個別の事情に応じた法的・税務的助言を行うものではありません。届出様式・添付書類・転用の可否は自治体・区域区分により異なります。実行前に農業委員会・市町村窓口・税理士等へご確認ください。(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)