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相続発生後

証券口座・株式の相続手続き|移管の流れ・NISAは引き継げない・投資信託の評価

公開日 2026年8月23日 ・ 更新日 2026年8月23日 ・ 10分で読めます

親が株式や投資信託を持っていた場合、預金とは手続きの構造が根本的に違います。証券は「解約してお金で受け取る」のではなく、原則「相続人が自分の証券口座を作って、そこへ移す(移管)」からです。売って現金で分けたい場合も、いったん移管してからでないと売れません。

この記事では、死亡後の証券口座の手続きを5ステップで解説し、NISAの非課税枠が引き継げない仕組み、相続税評価のルール、口座の探し方までまとめます。なお、存命中の認知症による「売れない」問題は別記事で扱っており、本記事は亡くなった後の手続きに絞ります。

死亡後、証券口座はどうなる?

証券会社が死亡を把握すると、口座は凍結され、売買・出金・配当の支払いが止まります。ここからは次の大原則で動きます。

証券相続の大原則

被相続人(亡くなった方)の口座の中では売却できません。相続人が同じ証券会社に自分名義の口座を開設し、そこへ株式・投資信託を「現物のまま」移管してから、保有を続けるか売却するかを選びます。「証券会社が売って現金で振り込んでくれる」という預金のイメージは通用しません。

また、家族が故人のID・パスワードでログインして売買することは絶対に避けてください。無権限の取引となるうえ、遺産の処分にあたる行為は相続放棄ができなくなる(単純承認)リスクにも直結します。

手続きの全体像|5つのステップ

STEP1 証券会社へ 死亡の連絡 口座は凍結される STEP2 残高証明書で 保有内容を確認 銘柄・数量・評価額 STEP3 誰が受け取るか を決める 遺言 or 分割協議 STEP4 相続人名義の 口座へ移管 同じ証券会社に開設 STEP5 保有継続 or 売却して分配 主な必要書類(一般的な例) ・証券会社所定の相続手続書類 ・戸籍一式または法定相続情報一覧図 ・相続人全員の印鑑証明書 ・遺言書 または 遺産分割協議書 ※ 必要書類は証券会社・遺言の有無により異なります。戸籍の束は法定相続情報一覧図で代替すると複数社を並行処理できます
図1:証券相続の5ステップ。山場はSTEP4の「同じ証券会社での口座開設と移管」です。

移管先の口座は原則として同じ証券会社に作ります(他社への直接移管は受け付けない扱いが一般的です)。普段ネット証券を使っている方でも、親が対面証券に口座を持っていれば、その証券会社にいったん口座を作ることになります。移管完了後に、自分のメイン証券会社へ移す「口座振替(移管)」を改めて行うことは可能です。

書類集めの負担は銀行の相続と共通する部分が多いため、「銀行の相続手続きと必要書類まとめ」と「法定相続情報一覧図」もあわせてご覧ください。遺産分割協議書に株式を書く際の記載例は「遺産分割協議書のケース別記載例」にあります。

NISA口座の相続|非課税枠は引き継げない

NISAで最も誤解が多いのが「非課税のまま家族が引き継げる」というイメージです。結論は次のとおりです。

項目扱い
非課税枠(NISA口座のまま承継)引き継げません。NISAは本人一代限りの制度です
移管先相続人の課税口座(特定口座・一般口座)へ移管。相続人のNISA口座には入れられません
死亡日までの値上がり益非課税のまま。死亡日の時価で取得し直した扱いになります
取得価額相続人側では死亡日の時価に付け替え。以後の値上がり分だけが課税対象になります
死亡後の配当・分配金非課税の対象外になります。死亡の連絡が遅れるとさかのぼって課税扱いになるため、早めの連絡が重要です
手続き上の注意

NISA口座がある場合は、通常の相続書類に加えて「非課税口座開設者死亡届出書」等の提出が必要です。提出が遅れるほど配当の課税関係の訂正が面倒になるため、STEP1の死亡連絡の時点でNISAの有無を必ず伝えてください。

相続税評価のルール|上場株式は「4つの価格の最安値」

相続税の計算では、証券は次のルールで評価します。

上場株式:4つの価格のうち最も低いもの

No.評価に使える価格
死亡日(相続開始日)の終値
死亡月の終値の月平均
死亡月の前月の終値の月平均
死亡月の前々月の終値の月平均

①〜④のうち最も低い価格で評価してよい、という納税者有利のルールです。相場が直前に急騰していた場合などは、月平均を使うことで評価額を抑えられます。

投資信託:死亡日の基準価額ベース

投資信託は、原則として死亡日の基準価額をもとに、解約した場合の手取り相当額(信託財産留保額や源泉税相当を控除)で評価します。証券会社が発行する死亡日時点の残高証明書(評価額付き)を取得すれば、財産目録・相続税の計算にそのまま使えます(取得方法は残高証明書の取り方)。

なお、ここで扱ったのは上場株式・公募投信の話です。非上場の自社株はまったく別の評価体系になるため、「自社株(非上場株式)の相続と評価」をご覧ください。

口座がどこにあるか分からないときの探し方

ネット証券の普及で、家族が口座の存在を知らないまま亡くなるケースが増えています。手がかりの探し方は次の順で進めます。

順番方法
1郵便物・メール:取引残高報告書、税務署から届く書類、運用報告書のメールなど
2銀行通帳の履歴:証券会社への入出金・配当金の入金記録
3確定申告書の控え:特定口座年間取引報告書の添付があれば口座の存在が確定
4証券保管振替機構(ほふり)への開示請求:相続人であれば、故人がどの証券会社に口座を開設していたか(登録済加入者情報)の開示を請求できます。手数料は数千円程度

ほふりで分かるのは「どの証券会社か」までで、銘柄や残高は各証券会社への照会が必要です。デジタル環境の手がかり調査は「デジタル遺品の整理ガイド」も参考にしてください。

放置してはいけない3つの理由

① 値下がりしても売れない──移管が終わるまで誰も売却できず、相場リスクにさらされ続けます。
② 配当・株主権が宙に浮く──配当金を受け取れず、長期放置すると株主所在不明株式として売却・買取の対象になる制度もあります。
③ 相続税の申告期限は待ってくれない──申告・納税の期限は相続開始から10か月です(相続手続きの期限一覧)。評価に時間がかかる証券こそ、早めに残高証明書の取得まで進めておくべきです。

よくある質問

株を売って現金で分けたいのですが、証券会社が売ってくれますか?

売ってくれません。代表相続人の口座へ移管したうえで売却し、売却代金を分けるのが一般的な流れです。この方法(換価分割)を採る場合は、遺産分割協議書に換価して分配する旨を明記しておくと、税務上も手続き上も明確になります。

相続人が誰も証券口座を持ちたくありません。

それでもいったん相続人名義の口座を開設して移管する必要があります。移管後すぐに売却して口座を閉じることは可能です。単元未満株のみの場合は買取請求で現金化できることもあるため、証券会社に確認してください。

亡くなった親宛てに「特別口座」の通知が来ました。これは何ですか?

株券電子化のときに証券口座へ移されなかった株式が、信託銀行等の特別口座で管理されているものです。相続手続きの窓口は証券会社ではなく通知を出した信託銀行(株主名簿管理人)になります。

売却したら税金はかかりますか?

移管後に売却した場合、死亡日の時価(NISA分)または被相続人の取得価額(課税口座分)を基準にした譲渡所得課税の対象になります。また、相続税を納めた人が申告期限から3年以内に売却すると取得費加算の特例を使える場合があります(考え方は相続した不動産を売却したときの税金と共通です)。

証券をふくむ財産目録を、無料でつくれます

残高証明書の内容を入力するだけで、銘柄・数量・評価額を整理した財産目録が完成。遺産分割協議書の下書きにもそのまま引き継げます。

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

ご利用にあたって:本記事は一般的な制度解説であり、個別の事情に応じた法的・税務的助言を行うものではありません。手続き・必要書類は証券会社により異なり、税務の取扱いは改正されることがあります。最新の取扱いは各社・税理士等にご確認ください。(本文中の情報は2026年8月時点にもとづきます)