親が連帯保証人だったら|保証債務は相続される・調べ方・放棄の判断
親が亡くなって数年後、見知らぬ金融機関から「お父様が連帯保証人になっている借入の返済が滞っています」と通知が届く——連帯保証人の地位は相続され、しかも信用情報には載らないため、相続の時点で気づかないことが多い債務です。
この記事では、相続される保証とされない保証、調べ方、主債務者が払えないときの負担と相続税の扱い、放棄の判断を整理します。借金全般の調べ方は「親の借金は相続される?」をどうぞ。
①連帯保証人の地位は相続人が法定相続分で引き継ぐ。主債務者が返せなくなれば相続人に請求が来る ②相続されないのは身元保証と、極度額のない古い根保証の「相続開始後に生じた債務」。2020年改正後の個人根保証は保証人の死亡で元本が確定する ③保証債務は信用情報に載らないことが多く、契約書・通知・主債務者への確認で探す。会社の経営者保証は特に注意 ④債務控除は主債務者が弁済不能のときだけ。保証額が財産を上回る恐れがあれば3か月以内に放棄か限定承認
保証人の地位は相続される——原則と例外
連帯保証は「主債務者が返せなければ保証人が代わりに返す」契約で、保証人の地位は相続人に引き継がれます(判例で確立)。借金と同じく、相続人が法定相続分に応じて分割して負います。主債務者が返済を続けている間は何も起きませんが、主債務者が返せなくなった時点で、相続人に請求が来ます。
厄介なのは、相続の時点では「借金」として見えないことです。親自身の借金なら通帳の返済履歴や督促状で気づきますが、保証は親が払っていないので痕跡がなく、数年後に突然請求が来ます。期限後に発覚した場合、「知らなかった」事情があれば期限後の放棄が認められることもあります(「相続放棄の期限が過ぎたら?」)。
相続されない保証——身元保証と根保証の扱い
| 保証の種類 | 相続 | 内容 |
|---|---|---|
| 通常の連帯保証(特定の借入・賃貸借) | される | 住宅ローン・事業資金・車のローン・賃貸の家賃保証など。金額が特定されている |
| 身元保証 | されない | 従業員の身元保証人は、保証人の死亡で終了する(判例)。施設入所や入院の身元保証も同様と解されることが多い |
| 根保証(極度額あり・2020年改正後) | される(確定額のみ) | 保証人の死亡時点で元本が確定し、その額を相続する。死亡後に生じた借入は対象外 |
| 根保証(極度額なし・改正前の契約) | 一部されない | 相続開始後に生じた債務は相続人が負わない(判例)。開始時点の残高は相続する |
| 会社の借入の経営者保証 | される | 親の会社の借入の保証。後継者への引き継ぎや経営者保証ガイドラインによる整理を検討 |
2020年改正で個人根保証は極度額が必須になり、保証人の死亡で元本が確定します。改正前の古い契約は極度額がないものがあり、相続開始時点の残高を確認する必要があります。
見つけにくい保証債務の調べ方
- 書類を探す——保証契約書、契約書の写し、金融機関からの通知、親の手帳やメモ
- 信用情報を取り寄せる——親自身の借入は載るが、保証債務は載らないことが多い。載っていなくても保証がないとは言えない
- 心当たりに聞く——親の兄弟・親族・知人、親や親族の会社の借入について「保証人になっていないか」を直接確認する。放棄の期限内に
- 金融機関に照会する——取引していた金融機関に相続人として保証契約の有無を問い合わせる
経営者保証は、会社の決算書や借入明細の「代表者保証」の記載で確認できます。後継者がいれば保証の引き継ぎを金融機関と交渉します(「自社株の相続と評価」)。
負担が生じたときの扱い——債務控除・放棄・限定承認
相続税——保証債務は原則として債務控除できません。主債務者が返せば保証人の負担はないからです。例外は、主債務者が弁済不能で、保証人が肩代わりすることが確実で、主債務者に求償しても回収できない場合。この3つが揃えば控除できます(「相続税の債務控除」)。
放棄・限定承認——保証額が財産を上回る恐れがあるなら3か月以内に検討します。保証は「今すぐ請求されるとは限らない」債務なので判断が難しく、主債務者の返済状況と残高、財産の全体像を並べて決めてください(「限定承認とは」)。
請求が来たら——相続人は法定相続分の範囲でしか責任を負いません。分割弁済の交渉、主債務者や他の保証人への求償も可能。期限後なら、知らなかった事情を示して期限後の放棄を申述する道を弁護士に相談してください。
保証債務も「債務」欄に書き出す——親自身の借金と保証人になっている借入を、財産と並べて一枚に。放棄か相続かの判断と、債務控除の準備が同時にできる財産目録の下書きを、画面のステップに沿って無料でつくれます。
財産目録をつくるよくある質問(FAQ)
父が兄の住宅ローンの連帯保証人でした。私にも請求が来ますか?
来る可能性があります。父の保証人の地位は相続人全員に法定相続分で引き継がれ、兄が返済を続けている限り請求はありませんが、兄が返せなくなれば、あなたに法定相続分の範囲で請求が来ます。兄自身も相続人なら、兄は主債務者かつ保証債務の相続人という立場になります。今のうちに兄の返済状況を確認し、金融機関に保証人の変更(兄の配偶者など)ができないか相談しておくと、将来の請求を避けられることがあります。
親が施設入所の身元保証人になっていました。相続されますか?
施設や病院の身元保証は、従業員の身元保証と同じく保証人の死亡で終了すると解されることが多く、相続されないのが一般的です。ただし契約書に「未払いの利用料を保証する」など金銭的な保証が明記され、死亡時点で未払いがあれば、その分は相続債務になり得ます。施設に連絡して契約内容を確認し、未払いがなければ保証人の変更を求めてください。身元保証の考え方は入院・施設の保証人の記事も参考に。
相続放棄の期限を過ぎてから、保証の請求が来ました。
保証債務の存在を知らず、知り得なかった事情があれば、「債務の存在を知った時から3か月」として期限後の相続放棄が認められることがあります。財産をすでに相続して使っている場合は難しくなりますが、財産がほとんどなく、保証の存在を知る手がかりがなかったなら可能性があります。請求書を受け取った日を記録し、すぐ弁護士に相談してください。放棄できなければ、法定相続分の範囲で分割弁済の交渉を行い、主債務者に求償します。
保証債務があるか不明のまま、財産を相続してよいですか?
3か月の熟慮期間内に調べきれなければ、家庭裁判所に期間伸長を申し立てて調査の時間を確保してください。それでも不明なら、財産の範囲内でだけ債務を負う限定承認が、後から保証の請求が来ても財産以上の負担を避けられる手段です。ただし限定承認は相続人全員で行う必要があり、手続きも重いため、財産と債務の見込みを整理して専門家に相談してください。
まとめ
親が連帯保証人だった場合、保証人の地位は相続人に法定相続分で引き継がれます。身元保証は相続されず、改正前の極度額のない根保証は相続開始後の債務を負いません。保証債務は信用情報に載らないことが多く、契約書・通知・主債務者への確認でしか見つからない——会社の経営者保証は特に注意です。債務控除は主債務者が弁済不能のときだけ。保証額が財産を上回る恐れがあれば、3か月以内に放棄か限定承認を。期限後に発覚しても、知らなかった事情があれば放棄の道は残ります。
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。