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認知症でも遺言は書ける?遺言能力の判断と無効にされない作り方

公開日 2026年9月11日 ・ 更新日 2026年9月11日 ・ 9分で読めます

認知症と診断された親は今からでも遺言を書けるのか。亡くなった親の遺言は当時認知症だったが有効なのか——どちらも「遺言能力」があったかどうかで決まります。

判断基準、有効な遺言を残す実務、成年後見開始後のルール、無効を争う側の手続きを整理します。遺言が無効になるケース全般は「遺言書が無効になるケース5選」をどうぞ。

この記事の要点

①遺言能力とは、遺言の内容と結果を理解し判断できる能力。認知症の診断があっても能力があれば有効。判断は遺言の時点で行う ②裁判所は、診断名や検査の点数だけでなく、遺言の複雑さ(単純なほど低い能力で足りる)、作成の経緯、内容の合理性を総合して判断する ③有効性を守るには、医師の診断書、公正証書遺言、シンプルな内容、作成過程の記録 ④成年後見開始後の遺言は医師2人以上の立会いが必要。無効を争う側は遺言無効確認訴訟で診療記録や介護記録を証拠にする

遺言能力とは——診断名ではなく「理解と判断」

遺言には、遺言をする時点で遺言能力——内容と結果を理解し、自分の意思で判断できる能力——が必要です。この能力を欠く状態で書かれた遺言は無効です。

ここで重要なのは、認知症の診断があること自体は、遺言能力を否定しないということです。逆に、診断がなくても能力を欠いていれば無効です。問われるのは「遺言をしたその時に、その内容を理解できていたか」です(「遺言書の効力はどこまで及ぶ?」)。

裁判所はどう判断するか——4つの考慮要素

考慮要素内容
①医学的な状態診断名、認知機能検査の点数、診療記録・介護記録の当時の言動。点数だけでは決まらない
②遺言の複雑さ「全財産を妻に」のような単純な遺言は、低い能力でも有効とされやすい。財産ごとに複数の人へ細かく分ける遺言は、高い理解力が必要
③作成の経緯本人が自ら望んだか、特定の相続人が主導して署名させたか。後者は能力と真意の両面で疑われる
④内容の合理性それまでの言動や家族関係と整合するか。疎遠だった人に突然全財産を渡す遺言は不自然と見られる
遺言能力の判断で考慮される要素(2026年8月時点の裁判例の傾向)。

認知機能検査(長谷川式など)は目安ですが、点数が低くても単純な遺言なら有効とされた例、高くても複雑な遺言で無効とされた例の両方があります。「何点なら有効」という基準はありません。

認知症でも有効な遺言を残す実務——診断書・公正証書・シンプルに

  1. 医師の診断書を取る——遺言を作る直前に「遺言の内容を理解し判断する能力がある」旨の診断書を書いてもらう。遺言と同じ時期の記録が最も価値がある
  2. 公正証書遺言で作る——公証人が本人と面談し、内容を読み聞かせて意思を確認する。公証人が能力に疑いを持てば作成を断るため、作成された事実自体が能力の裏付けになる(「公正証書遺言の作り方」)
  3. 内容をシンプルにする——「自宅は長男、預金は長女、残りは妻」程度の骨格にし、複雑な指定は避ける
  4. 作成の経緯を記録する——本人が遺言を望んだきっかけ、相談日、本人が話した内容をメモで残す。特定の相続人の同席・主導は避ける
  5. 付言で理由を書く——なぜその分け方にしたかを本人の言葉で残す

自筆証書遺言は能力の証明が残りにくいため、認知症の診断がある場合は公正証書を選んでください。

成年後見が始まった後の遺言と、無効を争う側の手続き

成年後見が始まった後——成年被後見人(後見類型)でも遺言はできますが、判断能力が一時的に回復した状態で、医師2人以上が立ち会い、遺言時に能力があった旨を遺言書に付記して署名押印するという特別な方式が必要です(民法973条)。保佐・補助の場合はこの方式は不要で、通常どおり遺言できますが、能力の証明のために診断書と公正証書を組み合わせるのが安全です。

無効を争う側——地方裁判所に遺言無効確認訴訟を起こします。証拠は診療記録・介護記録・要介護認定の資料・当時の言動を知る人の証言。公正証書遺言でも無効とされた例はありますが、立証のハードルは高く時間と費用がかかります。資料を集め、弁護士に見込みを相談してください。

シンプルな遺言ほど、有効性は守られます——誰に何を残すかの骨格を整理した遺言書の下書きを、画面のステップに沿って無料でつくれます。公証役場での作成前の整理に。

遺言書をつくる

よくある質問(FAQ)

認知症の診断が出ていますが、本人は遺言を書きたがっています。今からでも間に合いますか?

内容を理解して判断できる状態なら間に合います。すぐに医師の診断書を取り、公正証書遺言で、内容をシンプルにして作成してください。公証人が能力に疑いを持てば作成を断ります。家族が文案を主導すると「誘導された」と争われる材料になるため、本人の希望を本人の言葉で確認し、記録を残して進めてください。

長谷川式で15点でした。遺言は無効ですか?

点数だけで無効にはなりません。裁判所は点数に加え、遺言の複雑さ・作成の経緯・内容の合理性を総合して判断します。15点程度でも「全財産を妻に」のような単純な遺言は有効とされた例があり、逆に高い点数でも複雑な遺言で無効とされた例があります。今から作るなら、内容を単純にし、診断書と公正証書で固めることで有効性を高められます。すでに作られた遺言を争う側なら、点数は有力な材料ですが、それだけでは足りないと考えてください。

父の公正証書遺言は、認知症になった後に作られています。争えますか?

争えますが、公正証書遺言は公証人が意思を確認して作成しているため、無効を認めさせるハードルは高いのが実情です。作成日前後の診療記録・介護記録・主治医意見書を取り寄せ、当時の理解力を示す資料を集めます。内容が複雑で特定の相続人が主導した経緯があれば可能性は上がります。弁護士に見込みを確認してください。遺言が有効でも遺留分侵害額請求は別に行えます。

成年後見人がついている母に遺言を書いてもらえますか?

後見類型の場合、判断能力が一時的に回復した状態で、医師2人以上の立会いのもとで遺言するという特別な方式が必要です。医師は遺言時に本人に能力があった旨を遺言書に付記して署名押印します。実務では公正証書遺言と組み合わせて行います。ただし回復している状態でなければ作れないため、主治医に相談して可能かを確認してください。保佐・補助なら通常どおり遺言できますが、能力の証明として診断書と公正証書を用意するのが安全です。

まとめ

認知症でも、遺言の内容と結果を理解して判断できる「遺言能力」があれば遺言は有効です。裁判所は医学的状態・遺言の複雑さ・作成の経緯・内容の合理性を総合して判断し、検査の点数だけでは決まりません。守るための実務は、医師の診断書、公正証書遺言、シンプルな内容、作成過程の記録、本人主導。成年後見の開始後は医師2人の立会いが必要。争う側は診療記録と介護記録を集めて遺言無効確認訴訟へ。書けるうちに、単純に、公正証書で——それが認知症と遺言の答えです。

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この記事の監修

ゾウゾクグループ

長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。

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