孫への贈与|非課税のやり方と2割加算・名義預金の落とし穴
「子より孫に渡したい」——祖父母の素朴な願いは、相続税の面でも理にかなっています。孫への贈与は相続を一世代飛ばせるうえ、原則として死亡前7年の持ち戻しの対象にならないからです。子への贈与にはない、二つの利点です。
ただし、孫名義の通帳を祖父母が持っていれば名義預金、遺言で渡せば2割加算——落とし穴も孫特有です。この記事では、孫に非課税で渡す5つの方法と、避けるべき落とし穴を整理します。贈与税の基本は「贈与税はいくらから?」をどうぞ。
①孫への贈与の利点は、子の世代の相続税を1回飛ばせることと、孫が相続や遺贈で財産を受け取らない限り死亡前7年以内の贈与でも持ち戻されないこと ②非課税で渡す方法は、年110万円の暦年贈与、都度の教育費・生活費、教育資金一括贈与(1,500万円)、結婚・子育て資金(1,000万円)、住宅取得資金(500万〜1,000万円)の5つ ③最大の落とし穴は名義預金——祖父母が通帳と印鑑を管理し孫が知らなければ祖父母の財産と判定される。契約書・振込・孫側の管理が鉄則 ④遺言で渡す・養子にする・保険の受取人にすると2割加算
孫への贈与が有利な二つの理由——一世代飛ばしと7年ルール
一つ目は一世代飛ばし。祖父母→子→孫と移れば相続税は2回かかりますが、孫へ直接贈与すれば子の相続で課税される分がなくなります。子の財産が多い家ほど効果は大きくなります。
二つ目は7年ルールの対象外であること。亡くなる前7年以内の贈与は相続財産に持ち戻されますが、これは「相続や遺贈で財産を取得した人」への贈与に限られます。孫は通常、相続人ではないため、亡くなる直前の贈与でも持ち戻されません(「生前贈与の7年ルール」)。高齢になってからの贈与先として孫が選ばれる理由です。ただし、孫が遺言で財産を受け取る、養子になっている、死亡保険金の受取人になっている場合は「取得した人」に当たり、この利点は消えます。
非課税で渡す5つの方法
| 方法 | 非課税の範囲 | 向く場面・注意 |
|---|---|---|
| 暦年贈与 | 年110万円まで(孫ごと) | 使途を問わない。18歳以上の孫なら110万円超の部分も特例税率で軽い。毎年の契約書と振込が必須 |
| 都度贈与(教育費・生活費) | 通常必要な額に上限なし | 学費・入学金・仕送りを必要な都度、直接払う。まとめ渡しは通常の贈与になる |
| 教育資金の一括贈与 | 1,500万円(学校以外500万円) | 専用口座・領収書。使い残しと死亡時の残額に課税あり(「教育資金一括贈与」) |
| 結婚・子育て資金の一括贈与 | 1,000万円(結婚は300万円) | 死亡時の残額は例外なく加算。都度贈与で足りることが多い |
| 住宅取得資金の非課税 | 500万〜1,000万円 | 孫が家を買うとき。期限内の入居と申告が条件(「住宅取得資金の贈与」) |
基本は暦年贈与と都度贈与の組み合わせ。学費は都度払い、別に年110万円を孫の口座へ——制度の縛りなしに相応の額を移せます。孫が5人なら年550万円です。相続時精算課税を選んだ孫は相続時に贈与分が加算され2割加算の対象にもなるため、孫への贈与は暦年贈与が基本です。
最大の落とし穴——名義預金にしない鉄則
孫への贈与で最も多い失敗が名義預金です。「孫名義の口座に毎年110万円ずつ入れているが、通帳も印鑑も祖父母が持ち、孫は口座の存在を知らない」——これは贈与ではなく、祖父母の財産が孫の名前で置いてあるだけと判定されます。相続税の税務調査で最も指摘される項目で、10年分を戻されれば1,000万円超が相続財産に加わります(「タンス預金と名義預金は相続でバレる?」)。
- 贈与契約書を毎年作る——祖父母と孫(未成年なら親権者が代理)の署名。「あげた・もらった」の合意を残す
- 孫の口座へ振り込む——現金手渡しではなく、記録の残る振込で
- 通帳・印鑑・カードは孫(または親権者)が管理する——祖父母の手元に置かない。孫が成人したら本人に渡す
- 孫が自由に使える状態にする——「使ってはいけない」と縛ると、実質は祖父母の管理下と見られる
幼い孫への贈与は親権者が受け取り管理して構いません。祖父母が管理を続けることだけが問題です。
2割加算・生命保険・不公平——孫特有の注意点
- 遺言で渡すと2割加算——生前贈与ではなく遺言で孫に残すと、孫の相続税は1.2倍。さらに7年ルールの対象にもなり、生前贈与の利点が消えます。「生前は贈与、死後は子へ」が孫の基本形です(「相続税の2割加算」)
- 孫養子も2割加算——基礎控除と生命保険の非課税枠が増える一方、孫の取得分は加算対象。孫にあまり渡さない設計なら有効
- 生命保険の受取人を孫にしない——非課税枠が使えず、2割加算の対象になり、7年ルールの利点も失います。受取人は配偶者か子に
- 子の間の不公平——孫の人数が子ごとに違えば贈与額に差が出て、子の世代の不公平感が相続で噴き出すことがあります。誰にいくら渡したかを記録し、遺言や話し合いで調整を
孫への贈与は、税金だけ見れば有利な方法です。だからこそ、記録(契約書・振込)と公平(家族全体の設計)を揃えて初めて、後悔のない贈与になります。
孫への贈与は、毎年の契約書から——祖父母と孫(親権者)の合意を残す贈与契約書の下書きを、画面のステップに沿って無料でつくれます。名義預金と言われない第一歩です。
贈与契約書をつくるよくある質問(FAQ)
0歳の孫に贈与できますか?契約書は誰が署名しますか?
できます。未成年の孫の場合は親権者(孫の親)が孫に代わって受諾し、契約書に署名します。振込先は孫名義の口座で、通帳と印鑑は親権者が管理します。祖父母が管理を続けると名義預金と判定されるため、必ず親権者に渡してください。孫が成人したら本人に口座を引き継ぎ、贈与の経緯も伝えておくと、将来の税務調査で本人が説明できます。
孫に毎年110万円ずつ渡すと「定期贈与」で課税されると聞きました。
「毎年110万円を10年間渡す」と最初に約束すると、1,100万円をまとめて贈与したものとみなされ初年度に課税される——これが定期贈与の指摘です。毎年その都度、贈与契約書を作って合意し、金額や時期を年によって変えていれば、定期贈与とはみなされません。「10年分を約束する契約書」を作らず、毎年独立した贈与として記録することが対策です。
子(孫の親)を通さず、祖父母から孫へ直接渡して問題ありませんか?
税金上は問題ありません。ただし家族関係の面では、孫の親である子に知らせずに贈与を続けると、後で「知らなかった」「兄弟の孫だけ多い」というもめごとになりがちです。祖父母が贈与の一覧を残し、子の世代に伝えておくことをおすすめします。
孫に渡した贈与は、祖父母の相続で特別受益になりますか?
原則としてなりません。特別受益は相続人が受けた贈与を相続分の計算に反映する制度で、相続人でない孫への贈与は対象外です。ただし実質的に子(孫の親)への贈与とみなされる場合は、子の特別受益と判断されることがあります。また極端に多い贈与は、遺留分の計算に含まれる可能性があります。
まとめ
孫への贈与は一世代飛ばしと7年ルールの対象外という二つの利点があり、相続税対策として有効です。渡し方は暦年贈与110万円+都度の教育費を基本に、教育資金・結婚子育て・住宅資金の非課税制度を場面に応じて。最大の落とし穴は祖父母が通帳を管理する名義預金で、契約書・振込・孫側の管理が鉄則です。遺言や生命保険で渡すと2割加算になり利点が消えるため、「生前は贈与、死後は子へ」。記録と家族全体の公平を揃えて、後悔のない贈与に。
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
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