外貨預金・外国株の相続|評価の為替レート・手続き・円転するかの判断
親の口座に米ドルの外貨預金や米国株がある——外貨建ての財産は、手続きは国内と同じでも、評価と税金に外貨特有のルールがあります。
評価の為替レート、手続きの流れ、外貨のまま引き継ぐか円転するかの判断、相続後の税金、海外の口座との違いを整理します。海外にある資産の全体像は「海外に資産がある人の相続」をどうぞ。
①国内の金融機関にある外貨預金・外国株は通常の相続手続きで引き継げる。海外の金融機関に直接ある口座は現地の手続きが要る ②評価は死亡日の対顧客電信買相場(銀行が外貨を買い取るレート)で円換算。休日なら直前の営業日。外国株は現地の最終価格を最安値ルールで選んで換算 ③相続人は外貨のまま引き継ぐか円に換えるかを選べる。外貨で引き継ぐには同じ金融機関に外貨口座が要る ④相続後の円転による為替差益は雑所得、外国株の売却益は譲渡所得(取得費は故人の取得時の円換算額)。現地の源泉税は外国税額控除で調整
手続きの流れ——国内の金融機関にある外貨は通常の相続と同じ
日本の銀行・証券会社で保有している外貨預金や外国株は、日本の金融機関との契約なので、相続手続きは円預金や国内株と同じです。相続届、戸籍、印鑑証明書を提出し、誰が引き継ぐかを届け出ます(「証券口座・株式の相続手続き」)。
一方、海外の金融機関に直接開いた口座は、その国の法律と手続きに従う必要があり、プロベイトや現地の弁護士の関与が要ることがあります。本記事は前者を扱います。外貨特有なのは、①外貨のまま受け取るには同じ金融機関に外貨口座が要る、②外国株の移管には外国株取引の口座が要る、③残高証明書に外貨額と円換算額の両方を記載してもらう、の3点。残高証明書は「死亡日時点・外貨建て・換算レート付き」で依頼してください(「相続の残高証明書の取り方」)。
相続税評価——死亡日の電信買相場で円換算・外国株の価格の選び方
外貨建ての財産は死亡日のレートで円換算します。使うのは対顧客電信買相場——銀行が外貨を買い取るときのレートで、電信売相場や仲値ではありません。
| 財産 | 評価の方法 |
|---|---|
| 外貨預金 | 死亡日の残高×死亡日の電信買相場。既経過利息も加算。取引していた金融機関の公表レートを使い、休日なら直前の営業日 |
| 外国株(上場) | 現地の最終価格を、死亡日・死亡月・前月・前々月の各月平均のうち最も低い価格で選び、電信買相場で円換算 |
| 外貨建て投資信託・債券・保険 | 死亡日の時価・解約返戻金の外貨額×電信買相場。金融機関の証明書で確認 |
複数の金融機関に外貨がある場合、主な取引金融機関のレートで統一する扱いも認められています。「相続税評価用の残高証明書」を依頼すれば円換算額まで記載されます。円安の時期に亡くなると円換算額が大きくなります。
外貨のまま引き継ぐか、円に換えるか
相続人は①外貨のまま自分の外貨口座に移すか②円に換えて受け取るかを選べます。外国株も移管か売却かです。
- 外貨のまま引き継ぐ——同じ金融機関に外貨口座を持っていることが条件。円転のタイミングを自分で選べる
- 円に換えて受け取る——手続き時点のレートで円転される。相続税の評価(死亡日)と受け取る円額(円転日)にはズレが生じる
- 相続人ごとに違ってもよい——協議書に「外貨預金○ドルは長男が取得する」と外貨建てで記載できる
迷うなら、協議では外貨建てで取得者を決め、円転するかは取得した相続人が後で判断する形にすると、協議が為替の議論で止まりません。
相続後の為替差益と売却益の税金・外国税額控除
相続税は死亡日の円換算額で一区切り。相続後に円転や売却をして生じた損益は、相続人自身の所得として別に課税されます。
- 外貨預金の円転による為替差益——相続時の円換算額と円転時の円額の差が雑所得。差損は他の雑所得と通算できる
- 外国株の売却益——取得費は故人が買ったときの円換算額を引き継ぎ(相続時の評価額ではない)、差が譲渡所得。3年10か月以内の売却なら取得費加算の特例が使える(「相続した株を売却したときの税金」)
- 外国株の配当——現地で源泉徴収された税は「外国税額控除」を確定申告で受けられる
相続税は「引き継いだこと」、所得税は「引き継いだ後に値上がりした分」への課税で、対象が違います。故人の取得時の円換算額がわからないと、売却時に取得費を5%とみなされて不利になるため、取引報告書を金融機関に照会して残しておいてください。
外貨は「通貨・数量・換算レート」で財産目録に——外貨預金の残高と通貨、外国株の銘柄と株数、死亡日の電信買相場による円換算額を書き出せば、相続税の申告と遺産分割の準備が同時に進みます。画面のステップに沿って無料でつくれます。
財産目録をつくるよくある質問(FAQ)
外貨預金の評価は、電信売相場と電信買相場のどちらですか?
対顧客電信買相場です。銀行が外貨を買い取る、つまり預金者が外貨を円に換えるときのレートです。取引していた金融機関が死亡日に公表したレートを使い、休日なら直前の営業日。「相続税評価用」と伝えて残高証明書を依頼すれば円換算額が記載されます。
相続人の私は外貨口座を持っていません。ドルのまま引き継げますか?
同じ金融機関に外貨口座を開設すれば移管できます。開設したくない場合は円に換えて受け取ります。円転のレートは手続き時点のもので、死亡日のレートとは違います。外国株を株のまま引き継ぐには外国株の取引口座も必要です。協議の前に金融機関に確認しておいてください。
米国株の取得費は、故人がドルで買ったときの価格ですか?
取得費は故人が買ったときの購入価格を、その時点のレートで円換算した額を引き継ぎます。相続時の評価額ではありません。取引報告書や金融機関への照会で確認します。記録がないと売却額の5%を取得費とみなす扱いになり、税負担が大きくなります。
海外の証券会社に直接口座がある場合はどうなりますか?
口座のある国の法律に従い、多くの国でプロベイトや現地の専門家の関与が必要です。日本の相続税では全世界の財産が対象なので、海外口座も死亡日のレートで円換算して申告し、現地で相続税相当の税がかかれば外国税額控除で調整します。申告期限に間に合わなければ、見込額で申告し後で修正する対応を税理士と相談してください。
まとめ
国内の金融機関にある外貨預金・外国株は、手続きは円預金や国内株と同じですが、相続税の評価は死亡日の電信買相場で円換算し、外国株は最安値ルールで価格を選んでから電信買相場で換算します。相続人は外貨のまま引き継ぐか円転するかを選べ、外貨で受け取るには同じ金融機関の外貨口座が要ります。相続後の円転による為替差益は雑所得、外国株の売却益は故人の取得時の円換算額を取得費として譲渡所得——記録がないと取得費5%扱いで不利に。海外の金融機関に直接ある口座は現地の手続きが別に要ります。通貨・数量・レートを財産目録に残してください。
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。