家族信託の登記費用と税金|登録免許税・不動産取得税・信託目録
自宅や賃貸物件を家族信託に入れると、不動産の名義は受託者である子に移ります。このとき必要なのが「所有権移転」と「信託」の2つの登記。名義が動く以上、登録免許税や不動産取得税がかかるのでは、と心配する人は多いのですが、信託の登記は通常の名義変更より税負担が軽く設計されています。
この記事では、信託設定時の登記手続きと費用・税金、契約内容が公開される信託目録の注意点、登記をしないとどうなるかを整理します。信託が終了したときの登記と税金は「家族信託が終了したときの税金」、費用の全体像は「家族信託の費用はいくら?」をどうぞ。
①不動産を信託すると、所有権移転登記と信託の登記を同時に法務局へ申請する ②登録免許税は、所有権移転分が非課税、信託分が土地は固定資産税評価額の0.3%(軽減税率・期限つき)・建物は0.4%。評価額3,000万円の土地なら9万円 ③不動産取得税と贈与税はかからない。受託者は形式的な名義人で、財産を取得したとは扱われないため ④登記すると信託目録に委託者・受託者・受益者・目的・終了事由が記載され、誰でも閲覧できる。固定資産税の納税通知は受託者宛てに。登記しないと第三者に信託を主張できない
信託設定時の登記——所有権移転と信託の2つを同時に
不動産を信託財産にするには、契約を結ぶだけでは足りず、委託者(親)から受託者(子)への所有権移転登記と、その不動産が信託財産であることを示す信託の登記を、一つの申請で同時に行います。申請先は不動産の所在地を管轄する法務局です。
必要書類は、信託契約書(公正証書が一般的)、権利証、委託者の印鑑証明書、受託者の住民票、固定資産税の評価証明書、信託目録に記載する事項をまとめた書面。登記申請は自分でもできますが、信託目録の記載は専門性が高く、実務ではほぼ司法書士に依頼します。報酬のめやすは1件10万〜15万円程度です。住宅ローンや抵当権がついている不動産は、登記の前に金融機関の承諾が必要です(「ローン・抵当権つき不動産は家族信託できる?」)。
登録免許税と不動産取得税——いくらかかる・かからない
| 税金 | 信託設定時 | 参考:贈与で名義変更した場合 |
|---|---|---|
| 登録免許税(所有権移転) | 非課税 | 評価額の2% |
| 登録免許税(信託) | 土地:評価額の0.3%(軽減税率) 建物:評価額の0.4% | — |
| 不動産取得税 | 非課税 | 原則3%(軽減あり) |
| 贈与税 | かからない(受益者=委託者の場合) | 評価額に応じて課税 |
評価額が土地3,000万円・建物1,000万円の自宅なら、登録免許税は土地9万円+建物4万円=13万円。贈与で移せば登録免許税80万円に不動産取得税と贈与税が加わります。信託は「名義は動くが、実質の財産の主は変わらない」ため、取得税も贈与税もかからない——これが信託の税制上の位置づけです(「家族信託に贈与税はかからない?」)。
信託目録——契約内容が公開される
信託の登記をすると、登記記録に信託目録が付きます。ここには、委託者・受託者・受益者の氏名住所、信託の目的、信託財産の管理方法、信託の終了事由、受託者の権限(売却できるか等)などが記載されます。
注意すべきは、登記記録は誰でも取得できるため、信託目録の内容も公開されることです。「終了時は長男に帰属させる」といった家族の事情が第三者にもわかります。実務では必要な条項だけを目録に載せるなど、公開範囲を絞る工夫がされています。一方で、受託者が不動産を売却したり担保に入れたりするとき、買主や金融機関は信託目録で権限を確認します。売却権限が目録に明記されていないと受託者が売れない事態も起こるため、何を載せるかは設計段階から司法書士と詰めてください。
登記後に変わること・登記しないとどうなるか
- 固定資産税の納税通知が受託者宛てになる——翌年から納税通知書は受託者に届く。支払いは信託口口座から行い、個人財産と混同しない
- 受託者の名前で売却・賃貸ができる——目録に権限があれば、親が認知症になった後でも受託者の判断で売却できる
- 受益者・受託者に変更があれば変更登記——信託目録の変更登記が必要
- 信託終了時は終了の登記——帰属権利者への所有権移転と信託の抹消
逆に、契約はしたのに登記をしないと、信託を第三者に主張できません。受託者が売却しようにも登記上は親の名義のまま、親が認知症になれば結局売れない——信託した意味がなくなります。また、受託者の個人的な債権者から信託財産を守る「独立性」も、登記があって初めて確保されます。契約と登記はセット、と考えてください。
登記の土台は、契約書の設計から——信託する不動産、受託者の権限(売却・賃貸)、受益者と帰属権利者を整理した家族信託契約書の下書きを、画面のステップに沿って無料でつくれます。
家族信託契約書をつくるよくある質問(FAQ)
信託の登記は自分で申請できますか?
法律上はできます。ただし信託目録に記載する事項の作成に専門知識が必要で、記載が不十分だと受託者が後で売却できない、金融機関が対応しないといった不利益が生じます。司法書士に依頼するのが現実的です。費用を抑えたいなら、契約書の設計と下書きを自分で用意し、司法書士には登記と契約書の確認だけを依頼する形が有効です。
登録免許税の0.3%はいつまで使えますか?
土地の信託の登記にかかる登録免許税は本則0.4%で、租税特別措置により0.3%に軽減されています。この軽減は期限つきで、これまで延長を繰り返してきました。2026年8月時点で適用されていますが、登記の時点で延長されているかは法務局や司法書士に確認してください。建物は本則の0.4%で軽減はありません。なお、信託終了時に帰属権利者が委託者の相続人であれば、終了時の所有権移転の登録免許税は相続と同じ0.4%で済む扱いがあります。
固定資産税は誰が払うのですか?親の口座から払えますか?
納税義務者は登記上の所有者である受託者で、納税通知書も受託者宛てに届きます。実質的な負担は信託財産から行うのが原則で、信託口口座から支払います。親の個人口座から払うことも親が受益者である以上は問題になりにくいですが、信託財産と個人財産を分ける観点から、信託口口座に納税分の資金を入れておくのがきれいな形です。受託者が立て替えた場合は信託財産から精算し、帳簿に記録してください。
信託目録を見られたくありません。載せる内容を減らせますか?
減らせます。記載が必要なのは委託者・受託者・受益者、目的、管理方法、終了事由など法定の事項ですが、条文を丸ごと転記する必要はなく、要点だけを記載する方法が一般的です。受益者の氏名を伏せることはできませんが、「受益者代理人を置き、受益者代理人の氏名を記載する」ことで受益者の氏名を目録に載せない扱いも実務にはあります。どこまで絞れるかは法務局の運用にもよるため、司法書士に相談してください。
まとめ
不動産を家族信託すると、所有権移転と信託の2つの登記を同時に行い、登録免許税は所有権移転分が非課税、信託分が土地0.3%(軽減)・建物0.4%、不動産取得税と贈与税はかからない——贈与で名義を移す場合の何分の一かの負担です。契約内容は信託目録として公開されるため、載せる範囲と受託者の権限の書き方を設計段階で詰めてください。登記をしなければ受託者は売却できず、信託の独立性も守れません。契約と登記はセット、費用は司法書士報酬を含めて見積もりを。
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。