献体・臓器提供の意思表示|手続き・家族の同意・葬儀との関係
「医学のために体を役立ててほしい」「臓器を必要な人に」——こうした意思は本人が決めるだけでは実現しません。献体も臓器提供も、家族の同意と死後すぐの連絡が事実上必要で、家族が知らなければ通常の葬儀へ進んでしまいます。
登録方法、家族の同意、遺骨の返還や葬儀との関係、両者が原則両立しないことを整理します。延命治療の意思表示は「尊厳死宣言書とは」をどうぞ。
①献体は、大学医学部・歯学部に生前登録し、死後に遺体を解剖学の教育に提供する制度。登録には家族の同意書が必要で、死亡後は速やかに大学へ連絡する。火葬費用は大学負担、遺骨は1〜3年後に返還 ②臓器提供は、脳死または心停止後に臓器を移植に提供する制度。意思表示はカード、運転免許証・マイナンバーカード・保険証の記入欄、ネット登録。本人の意思が不明でも家族の承諾で提供でき、家族が拒めば行われない ③両者は原則両立しない(角膜は例外あり)。どちらを優先するか決めておく ④どちらも葬儀と両立できる。意思はエンディングノートや尊厳死宣言書とともに家族へ伝える
献体——登録の手続き・家族の同意・遺体の返還
献体は遺体を大学の医学部・歯学部に提供し、解剖学実習など医学教育に役立ててもらう制度です。金銭の授受はなく、大学が搬送・保管・火葬の費用を負担します。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 登録 | 希望する大学(または篤志献体の会)に申し込み、申込書と家族の同意書を提出。登録証が交付される |
| 死亡時 | 家族が速やかに大学へ連絡(多くは48時間以内)。感染症・事故死・臓器摘出後などは受け入れられないことがある |
| 提供期間 | 解剖実習の後、大学が火葬。遺骨の返還は1〜3年後が一般的 |
| 費用 | 搬送・保管・火葬は大学負担 |
最大の関門は家族の同意です。死亡後に家族の一人でも反対すれば、大学は遺体を引き取りません。生前に家族全員の理解を得ておくことが唯一の条件です。遺骨がすぐ戻らないこと、火葬に立ち会えないことを受け入れられるかも確認してください。
臓器提供——意思表示の方法と家族の承諾
臓器提供は、脳死判定の後または心停止後に、心臓・肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸・眼球(角膜)などを移植のために提供する制度です。意思表示の方法は4つ。
- 臓器提供意思表示カード——役所・郵便局・薬局などで入手
- 運転免許証・マイナンバーカード・健康保険証の意思表示欄——裏面に記入。免許証は最も見つかりやすい
- 日本臓器移植ネットワークのネット登録——変更もできる
- 提供しない意思——「提供しない」と記入すれば、家族の承諾があっても提供されない
2010年の法改正で、本人の意思が不明でも家族の承諾があれば提供できるようになり、15歳未満からの提供も家族の承諾で可能になりました。逆に本人が「提供する」と表示していても、家族が拒めば提供は行われません。判断は病院で短時間のうちに求められるため、家族が本人の意思を事前に知っていることが決定的です。
献体と臓器提供は両立しない——優先順位を決める
「献体もして臓器提供もしたい」は原則叶いません。臓器を摘出した遺体は解剖学実習に必要な状態が保てないため、多くの大学が献体として受け入れないからです。逆に献体を優先すれば臓器提供の機会はなくなります。
例外は角膜です。角膜提供の後に献体を受け入れる大学もあります(大学ごとに確認)。判断の材料は、①献体は年齢や持病があっても受け入れられることが多いが、臓器提供は医学的条件で提供できないことがある、②臓器提供は「今、命を待つ人」への貢献、献体は「未来の医師の育成」への貢献、③家族が受け入れやすいのはどちらか。優先順位を決め、登録先と家族に伝えておくことで、死亡時の混乱を防げます。
葬儀との関係と、意思を確実に実現する方法
どちらも葬儀と両立できます。献体は引き渡し前に通夜・葬儀を行うことが可能で(日数の制限あり)、遺骨が戻った後に納骨・法要を行う家もあります。臓器提供は摘出後に遺体が家族に戻され、通常どおり葬儀ができます(「直葬(火葬式)とは」)。
- 家族に直接話す——登録の前に配偶者・子に意思と理由を伝える。ここを飛ばした意思表示は実現しない
- 登録・記入する——献体は大学へ申し込み、臓器提供はカードや免許証に記入またはネット登録
- 書面に残す——エンディングノートに献体先の大学名・登録番号・連絡先、臓器提供の意思と登録の場所を書く。尊厳死宣言書と一緒に保管し、家族が死亡直後に見つけられる場所に置く(「エンディングノートの書き方」)
- おひとりさまは死後事務委任と組み合わせる——連絡する家族がいなければ、受任者に大学への連絡を頼んでおく
意思は「決める」だけでは足りず、「伝わる」形にして初めて実現します。死亡から数時間〜数日の間に家族が動けるかがすべてです。
最期の医療と、その後の体のこと——一枚に——延命治療の希望を残す尊厳死宣言書の下書きを、画面のステップに沿って無料でつくれます。献体・臓器提供の意思と一緒に保管し、家族に伝えてください。
尊厳死宣言書をつくるよくある質問(FAQ)
献体を登録していますが、家族が反対しています。実現しますか?
実現しない可能性が高いです。大学は死亡後に家族の同意を確認し、一人でも強く反対すれば引き取りません。登録時の同意書があっても、死亡時点の家族の意思が優先されます。生前に反対する家族と話し合い、なぜ献体を望むのか、遺骨がいつ戻るか、葬儀はどうするかを具体的に伝えて理解を得るしかありません。反対が続くなら、家族が受け入れやすい形(臓器提供など)を探るのも一つの選択です。
高齢や病気でも献体・臓器提供はできますか?
献体は年齢の上限がなく、多くの持病があっても受け入れられます。ただし特定の感染症、遺体の損傷が大きい場合、臓器摘出後などは受け入れられないことがあります。臓器提供は医学的に移植に適しているかで判断され、高齢や病気で提供できないことがあります。角膜は比較的高齢でも提供できることが多いです。どちらも最終的には死亡時の状況で決まる点は承知しておいてください。
献体すると、遺骨はいつ、どのような形で戻りますか?
解剖学実習が終わった後に大学が火葬し、遺骨は骨壺に納めて家族に返還されます。期間は大学により1〜3年程度。家族は返還後に納骨や法要を行えます。大学によっては合同の慰霊祭を毎年行い、遺骨の返還を希望しない場合は納骨堂に合祀してもらえるところもあります。時期と方法は登録時に確認し、家族に伝えておいてください。
臓器提供の意思を表示したら、治療に手を抜かれることはありませんか?
ありません。意思表示は救命治療が尽くされ、脳死判定の後または心停止の後に初めて考慮されるもので、治療の内容に影響しません。脳死判定は移植と無関係の医師が法定の手順で行い、家族の承諾がなければ判定自体が行われません。意思表示は家族が判断に迷わないための備えであり、治療を受ける権利とは切り離されています。
まとめ
献体も臓器提供も、本人の意思表示に加えて家族の同意と死後すぐの連絡が必要で、家族が知らなければ実現しません。献体は大学へ登録し、遺骨の返還は1〜3年後、費用は大学負担。臓器提供はカード・免許証・マイナンバーカード・ネット登録で意思を表示し、本人の意思が不明でも家族の承諾で提供できます。両者は原則両立せず(角膜は例外あり)、どちらを優先するかを決めておく。葬儀は両立可。家族に直接話し、登録し、エンディングノートと尊厳死宣言書に残す——伝わる形にして初めて、意思は実現します。
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この記事の監修
ゾウゾクグループ
長年にわたり相続分野で積み重ねてきた経験を活かし、zouzoku(ゾウゾク)を運営しています。相続・家族信託・終活に関する書類作成ツールと解説記事を提供しています。